平成25年秋期試験午後問題 問7

午前試験免除制度対応!基本情報技術者試験のeラーニング【独習ゼミ】

問7 システム戦略

販売管理システムの見直しを伴う業務改善に関する次の記述を読んで,設問1~3に答えよ。

 A社は美容用品(以下,商品という)の卸売業者であり,地方都市Xを中心に5か所の営業所をもっている。メーカーから仕入れた商品を,理容店や美容室など(以下,顧客という)に販売している。A社は10,000種類以上の商品を取り扱っており,商品は,各営業所の倉庫に保管されている。在庫数は販売管理システムで共通管理されているが,受発注処理や在庫管理は営業所ごとに行っている。各営業所には,営業担当と事務担当がいる。

〔業務の現状〕
  • 注文は,営業担当が顧客を訪問して受ける場合と,電話やファクシミリで受ける場合がある。営業担当は注文を受けると,口頭で事務担当に注文内容を連絡する。
  • 営業担当は,在庫があれば,注文を受けた翌日の午前中までに顧客に商品を届ける。営業担当が顧客に商品を届けるのは,市場の生の声や顧客のニーズを聴くためである。
  • 事務担当は,販売管理システムを使い,次の手順で受発注処理を行っている。
    1. 営業担当から注文内容の連絡を受けると,販売管理システムに注文内容を入力し,自営業所の在庫を確認する。
    2. 自営業所に必要な在庫数がない場合,販売管理システムで他営業所の在庫を確認する。
    3. 他営業所に在庫がある場合は,他営業所から商品を移動してもらうように電話で手配する。他営業所では発送作業を行い,自営業所では受取り作業を行う。商品の移動は当日中に行われる。
    4. 他営業所の在庫を移動しても必要数に満たない場合は,自営業所で販売管理システムから発注書を出力して,ファクシミリでメーカーに発注する。メーカーからの納品には数日掛かる。
  • 事務担当は,在庫をもつ商品の在庫管理を定量発注方式で行っている。定量発注方式とは,在庫数があらかじめ設定した数量(以下,発注点という)まで下がったときに,一定数量(以下,発注量という)を発注して在庫を補充する方法である。
     各営業所で,販売管理システムに商品ごとの発注点と発注量を設定している。
  • 事務担当は,商品が各営業所の倉庫から出庫される時点で販売管理システムに出庫入力し,販売管理システムは在庫数から出庫数を滅らす処理を行う。
 これまで,在庫をもつ商品と在庫をもたない商品を営業所ごとに決めて,在庫数の削減に努めてきた。しかし,更なる在庫数削滅のために,各営業所の倉庫をなくして,在庫を集約して一元管理するための物流倉康を新たに設置することを決定した。物流倉庫には,物流担当を置く。
 これに併せて,A社では営業所の業務の効率化を図ることを決定した。そこで,業務の現状分析から問題点の洗出しを行い,それらを解決するための改善案を取りまとめた。
 業務の効率化に当たり,営業担当が顧客に商品を届ける方法は従来どおりとする。

〔問題点〕
  • 営業担当から事務担当に口頭で注文内容を伝えているので,連絡ミスが発生している。
  • 販売管理システムの受発注処理と在庫数を減らす処理のタイミングに差があるので,販売管理システムの在庫数を見ても,顧客に納入可能な在庫数を正確に把握できない。
  • 取扱い商品の増加とともに,事務担当が受発注処理や在庫管理に費やす時間が増えている。他営業所の在庫確認や,営業所間での商品の発送作業と受取り作業にも 手間が掛かっている。
〔改善案〕
  • 営業担当は,注文内容を電子情報にして物流担当に伝える。物流担当は注文内容を 確認し,当日中に営業所に商品が到着するように発送する。
  • 顧客からの注文を受けたら速やかに,在庫数を減らす処理を行う。
  • メーカーヘの発注は営業所から行わず,物流担当がまとめて行う。

設問1

改善案(1)~(3)を実現するために,販売管理システムの改修の要求事項を設定した。要求事項に関する次の記述中の に入れる適切な答えを,解答群の中から選べ。
  • aを伝えて即時に販売管理システムに反映するために,営業担当が販売管理システムと連携した携帯用の注文入力端末で注文入力できるようにする。
  • 注文入力処理によって,受注処理と在庫数を滅らす処理を行うようにする。
  • bできるように,物流担当が発注点と発注量の設定を行えるようにする。
a に関する解答群
  • 営業所に市場の生の声
  • 営業所に注文内容
  • 顧客に在庫数
  • 物流担当に注文内容
b に関する解答群
  • 営業所に商品発送
  • 顧客に一括発送
  • メーカーから商品発送
  • メーカーに一括発注
解答選択欄
  • a:
  • b:
  • a=
  • b=

解説

aについて〕
改善案では在庫は物流倉庫で一括して管理され、注文を受けたら速やかに在庫数を減らす処理されます。また注文内容は営業担当が電子情報にして物流担当に伝えることになっています。
携帯用の入力端末を用意するのは物流担当への注文内容の伝達を迅速に行うためです。

a=エ:物流担当に注文内容

bについて〕
改善前は各営業所が商品ごとに発注点・発注量を設定していますが、改善後は在庫が物流倉庫で一括管理されるため、メーカーへの発注も営業所の基準ではなく物流倉庫が設定する最適な方法で一括して行うことになります。

b=エ:メーカーに一括発注

設問2

改善策を実施することで得られる効果に関する次の記述中の に入れる適切な答えを,解答群の中から選べ。
  • 各営業所の在庫をなくし,物流倉庫に集約することによって,cd
  • 営業担当が入力した注文内容で受注処理を行うことによって,注文連絡ミスによる無駄な作業がなくなる。
c に関する解答群
  • 営業担当
  • 顧客
  • 事務担当
  • 販売管理システム
d に関する解答群
  • 顧客を訪問する回数が削減される
  • 受発注処理や在庫管理に費やされる時間が削減される
  • 全ての商品の発注点と発注量が同じになる
  • ニーズを効率よく聴くことができる
解答選択欄
  • c:
  • d:
  • c=
  • d=

解説

まず先に改善効果を挙げているdが適切かどうかを考えます。
  • 営業担当が顧客に商品を届ける方法は従来通りなので効果は期待できません。
  • 正しい。現状の問題点として「取扱商品の増加に伴う事務処理の負担増加」が指摘されています。
    物流倉庫の設置により「受発注処理」「在庫管理」「他営業所の在庫確認」「営業所間での発送作業・受け取り作業」が物流倉庫に移管されるので、事務処理の負担が減る効果が期待できます。
  • 発注点と発注量は商品やグループごとに設定されるので不適切です。
  • 営業担当が直接顧客を訪問する回数は従来通りなので効果は期待できません。
事務処理を行っているのは事務担当なので、cには事務担当が入ります。

c=ウ:事務担当
 d=イ:受発注処理や在庫管理に費やされる時間が削減される

設問3

A社では,業務改善と販売管理システムの改修に先立ち,商品 K と商品 L を対象にして,物流倉庫に集約して一元管理することによる在庫数の削減効果を評価することにした。削減効果に関する次の記述中の に入れる正しい答えを,解答群の中から選べ。ここで,eは小数第1位を四捨五入するものとする。

 在庫数は,受注数量に合わせてもつ在庫数(以下,回転在庫数という)と,欠品を起こきさいようにもつ在庫数(以下,安全在庫数という)の和で表される。
 全体の受注数量に対して各拠点の受注数量が占める割合(以下,需要比率という)が異なるNか所の在庫拠点を,1拠点に集約したときの総在庫数を推定するための算出式は,次のとおりである。
pm07_1.png
 表1は,物流倉庫に在庫を集約する前の,A社の商品 K と商品 L の各営業所の在庫数及び需要比率である。
pm07_2.png
 在庫拠点を1拠点に集約したときの総在庫数の算出式と表1から,物流倉庫に在庫を集約して一元管理した場合,商品 K の総在庫数はe,商品 L の総在庫数は 465 となる。ここで,0.1=0.32,0.2=0.45,0.3=0.55,0.9=0.95を用いる。
 在庫を集約して一元管理をしたときの在庫数の削減効果は,f
e に関する解答群
  • 283
  • 307
  • 465
  • 565
f に関する解答群
  • 需要比率が各営業所で均一に近い商品の場合に高い
  • 需要比率が特定の営業所に偏在している商品の場合に高い
  • 需要比率が偏在している商品と均一に近い商品とでは,どちらが高いかは一概には言えない
  • どの商品も,各営業所の需要比率に関係なく同じである
解答選択欄
  • e:
  • f:
  • e=
  • f=

解説

eについて〕
表1のデータを元に設問で与えられた算出式で答えを導きます。

 回転在庫数の総和=25+30+20+10+10=95
 安全在庫数の総和=100+150+100+70+50=470
 需要比率の総和
0.20.30.20.20.1
=0.45+0.55+0.45+0.45+0.32
=2.22

 総在庫数=95+(470/2.22)
=95+211.711…=306.711…(個)

設問内にeは小数第1位を四捨五入して求めるという指示があるので、正解は307個になります。

e=イ:307

fについて〕
商品Kと商品Lの需要比率の分布をみると商品Kが5つの営業所に幅広く分布しているのに対し、商品Lでは営業所Pに9割が集中していることがわかります。

それぞれの削減効果は、次のようになっています。

[商品K]
改善前 … 95+470=565個
改善後 … 307個

[商品L]
改善前 … 95+470=565個
改善後 … 465個

元々の総在庫数は同じでしたが、削減可能な個数は商品Kが勝っています。したがって需要比率が各営業所で均一になっているほど削減効果が高くなると言えます。

f=ア

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