平成21年春期試験午後問題 問6
問6 プロジェクトマネジメント
スケジュール管理に関する次の記述を読んで,設問1~3に答えよ。
A社は,2年前に基幹業務システムをB社に委託して再構築し,業務効率の向上に成功した。経営改革を更に進めるため,蓄積された経営データを活用した経営管理システムを 開発することになり,情報システム部内で第Ⅰ期プロジェクトを立ち上げた。
〔第Ⅰ期プロジェクトの概要〕
経営管理システムは,経営データ分析サブシステムM1と経営幹部向けナビゲーションサブシステムM2とで構成される。M1はデータ集計用プログラムと分析プログラムとから成る。M2は,M1による分析結果を経営幹部向けに編集し,イントラネットを通してブラウザで閲覧できるようにする。これらのサブシステムの要件定義は,A社の情報システム部が行い,設計からテストまでの開発作業は,経営管理システムの開発経験も豊富であるB社に委託した。B社は,A社からシステムの概略機能について説明を受けた後に概算見積りを行い,開発期間を3か月として請負契約を結んだ。
なお,開発はすべてB社内で行うことにした。
〔システム開発の遂行状況〕
情報システム部による要件定義は予定どおりの日程で完了し,要件定義書がB社に渡された。B社は,自社内での開発作業を開始し,開発期間中は両社合同のプロジェクト進捗会議を毎週1回行った。
開発開始から2か月が経過した時点の進捗会議で,B社から"M1の開発作業に遅れが出ているが,開発メンバーを増やして納期に間に合わせる"という報告があった。しかし,2週間後にB社から"開発作業の遅れを取り戻せないので,納期をとりあえず2週間延ばしてほしい"との申出があり,A社は仕方なく了承した。その後もスケジュールの遅れは続き,当初の予定から1か月遅れて開発が完了した。B社からは,"M1が予想以上に複雑であり,更にM2の操作性を自社判断で一層高めたことによって,開発規模が当初見積りの1.5倍になってしまったことが遅延理由である"との報告があった。
A社側での受入検査の結果は,品質を含めて良好で,特に,M2は要件定義時の仕様よりも使い勝手がとても良く,経営幹部の評価も高かった。
A社は,2年前に基幹業務システムをB社に委託して再構築し,業務効率の向上に成功した。経営改革を更に進めるため,蓄積された経営データを活用した経営管理システムを 開発することになり,情報システム部内で第Ⅰ期プロジェクトを立ち上げた。
〔第Ⅰ期プロジェクトの概要〕
経営管理システムは,経営データ分析サブシステムM1と経営幹部向けナビゲーションサブシステムM2とで構成される。M1はデータ集計用プログラムと分析プログラムとから成る。M2は,M1による分析結果を経営幹部向けに編集し,イントラネットを通してブラウザで閲覧できるようにする。これらのサブシステムの要件定義は,A社の情報システム部が行い,設計からテストまでの開発作業は,経営管理システムの開発経験も豊富であるB社に委託した。B社は,A社からシステムの概略機能について説明を受けた後に概算見積りを行い,開発期間を3か月として請負契約を結んだ。
なお,開発はすべてB社内で行うことにした。
〔システム開発の遂行状況〕
情報システム部による要件定義は予定どおりの日程で完了し,要件定義書がB社に渡された。B社は,自社内での開発作業を開始し,開発期間中は両社合同のプロジェクト進捗会議を毎週1回行った。
開発開始から2か月が経過した時点の進捗会議で,B社から"M1の開発作業に遅れが出ているが,開発メンバーを増やして納期に間に合わせる"という報告があった。しかし,2週間後にB社から"開発作業の遅れを取り戻せないので,納期をとりあえず2週間延ばしてほしい"との申出があり,A社は仕方なく了承した。その後もスケジュールの遅れは続き,当初の予定から1か月遅れて開発が完了した。B社からは,"M1が予想以上に複雑であり,更にM2の操作性を自社判断で一層高めたことによって,開発規模が当初見積りの1.5倍になってしまったことが遅延理由である"との報告があった。
A社側での受入検査の結果は,品質を含めて良好で,特に,M2は要件定義時の仕様よりも使い勝手がとても良く,経営幹部の評価も高かった。
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設問1
B社は,今回のシステム開発での遅延理由を二つ挙げている。契約時の見積値とは違ってしまった原因の説明として,表1中の に入れる最も適切な答えを,解答群の中から選べ。
a,b に関する解答群
- 開発担当者の技術力が計画時の予測よりも低かったので,実際の開発期間が契約時の見積値を超えてしまった。
- 設計作業の途中に,A社との調整を行わないで勝手に機能を広げてしまったので,開発規模が増大し,実際の開発期間が契約時の見積値を超えてしまった。
- 要件定義書を受け取った時点で契約時の概算見積りを見直さなかったので,契約時の 概算見積りによる計画のまま開発が進められて,実際の開発期間が契約時の見積値を超えてしまった。
- 要件定義をすべてA社側で行った上に,開発作業をすべてB社内で行ったので,A社の業務の理解に計画よりも多くの時間を要した。また,仕様の解釈に誤解が生じて設計作業の手戻りも発生し,実際の開発期間が契約時の見積値を超えてしまった。
解答選択欄
- a:
- b:
- a=ウ
- b=イ
解説
B社はスケジュールが遅れた原因を「M1が想像以上に複雑であり、更にM2の操作性を自社判断で一層高めたことによって、開発規模が当初の見積もりの1.5倍になってしまった」と説明しています。〔aについて〕
B社はM1に対して「想像以上に複雑であり…」と説明しています。これは概算見積時点での予想とA社からの要件定義書に隔たりがあったためと考えられます。B社が要件定義書を吟味せずにそのまま開発に取り掛かってしまったために発生した遅れといえます。
∴a=ウ
〔bについて〕
B社はM2に対して「操作性を自社判断で一層高めたことによって…」と説明しています。当初の予定になかった機能を追加するときだけでなく仕様変更がある時はA社の許可を取るべきですが、B社独自に判断してしまったことが原因です。
∴b=イ
ちなみに「ア」に関しては開発担当者の技術不足という説明がない点、「エ」はB社は2年前にA社の基幹業務システムを開発していて業務に対する理解が十分にあったと想像できる点で原因としては不適切です。
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設問2
両社合同によるプロジェクト進捗会議を毎週実施したにもかかわらず,今回のような開発の遅れが生じたことを互いに反省し,進捗会議でのリスク管理について対策会議を行った。 この結果,次のような改善策の実施を決めた。 に入れる最も適切な答えを,解答群の中から選べ。
これまでの進捗会議では,主にサブシステム単位での作業状況を,B社から報告していた。開発上で何らかの問題が発生した場合又はそのおそれがある場合には,問題点の内容,プロジェクトへの影響度及び対策案について両社で相談してきた。
今後は,より定量的なデータによって開発状況の実態を把握し,プロジェクトに悪影響を与えることがないよう未然に防止する。もし発生した場合でも,その影響を最小限に抑えられるようにする。
定量的なデータとしては,各開発工程での作業成果物の生産データ(プログラム規模など),品質データ(レビュー結果,テスト結果など)及び進捗データ(プログラムの完成度,プロジェクト進捗度,計画と実績の差異分析)を使用する。これらのデータを分析することによって,例えば,今回の開発でのcといった現象を回避する。
また,開発途中での仕様,スケジュール,開発体制に関する変更管理(変更提案,変更に対する審議・承認など)を進捗会議の場で行う。これによって,例えば,今回の開発でのdといった現象を回避する。
これまでの進捗会議では,主にサブシステム単位での作業状況を,B社から報告していた。開発上で何らかの問題が発生した場合又はそのおそれがある場合には,問題点の内容,プロジェクトへの影響度及び対策案について両社で相談してきた。
今後は,より定量的なデータによって開発状況の実態を把握し,プロジェクトに悪影響を与えることがないよう未然に防止する。もし発生した場合でも,その影響を最小限に抑えられるようにする。
定量的なデータとしては,各開発工程での作業成果物の生産データ(プログラム規模など),品質データ(レビュー結果,テスト結果など)及び進捗データ(プログラムの完成度,プロジェクト進捗度,計画と実績の差異分析)を使用する。これらのデータを分析することによって,例えば,今回の開発でのcといった現象を回避する。
また,開発途中での仕様,スケジュール,開発体制に関する変更管理(変更提案,変更に対する審議・承認など)を進捗会議の場で行う。これによって,例えば,今回の開発でのdといった現象を回避する。
c,d に関する解答群
- 開発メンバーを増強する
- 概算見積りを行った時点よりも要求機能が複雑であったM1の納期遅延
- 操作性を一層高めたことによるM2の納期遅延
- 納期を2週間延ばした後の更なる遅れの発生
解答選択欄
- c:
- d:
- c=エ
- d=ウ
解説
〔cについて〕度重なる納期の遅れはB社におけるスケジュール管理の甘さを表しています。進捗会議にてプログラム規模やプロジェクト進捗度を定量的に把握し、計画との差異を分析することでスケジュールの遅延が見込まれる場合でも適切な対策を実施できるようになります。これによって無計画な納期の先送りを防止することができます。
∴c=エ
〔dについて〕
変更管理では仕様、スケジュール、開発体制の変更提案、変更に対する審議・承認が行われます。これらを進捗会議で行うことによって、M2の操作性の件のように委託先の自己判断で仕様変更が行われることを防止できます。
∴d=ウ
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〔第Ⅱ期プロジェクトの概要〕
経営管理システムの完成から1年後,A社の経営幹部から新たな経営データ分析機能の要求があり,情報システム部に第Ⅱ期プロジェクトを立ち上げた。このプロジェクトでは,経営データ分析サブシステムM3の新規開発とナビゲーションサブシステムM2の改造を行う。 システム開発はB社が再び請け負い,開発作業は前回の開発担当者2名で行う。B社では,前回の反省から,開発でのスケジュール見積精度の向上を図るために,3点見積法を使用したスケジュールリスク分析を行うことにした。
3点見積法とは,仕事の作業期間(ここでは日数)を,最頻値,悲観値(悲観的に最も長い期間を見積もる),及び楽観値(楽観的に最も短い期間を見積もる)の3種の値を用いて推定する方法である。3点見積法による作業期間の平均,分散,標準偏差,開発全体の標準偏差の計算式は,次のように定義されている。 B社が行った3点見積法によるスケジュールリスク分析を表2に示す。 なお,プロジェクトの作業日数の確率分布は,正規分布(平均μ,分散σ2)に 近似できると仮定する。作業日数がμ±1σの範囲に収まる確率は0.68であり,μ±2σの範囲に収まる確率は0.95である。
経営管理システムの完成から1年後,A社の経営幹部から新たな経営データ分析機能の要求があり,情報システム部に第Ⅱ期プロジェクトを立ち上げた。このプロジェクトでは,経営データ分析サブシステムM3の新規開発とナビゲーションサブシステムM2の改造を行う。 システム開発はB社が再び請け負い,開発作業は前回の開発担当者2名で行う。B社では,前回の反省から,開発でのスケジュール見積精度の向上を図るために,3点見積法を使用したスケジュールリスク分析を行うことにした。
3点見積法とは,仕事の作業期間(ここでは日数)を,最頻値,悲観値(悲観的に最も長い期間を見積もる),及び楽観値(楽観的に最も短い期間を見積もる)の3種の値を用いて推定する方法である。3点見積法による作業期間の平均,分散,標準偏差,開発全体の標準偏差の計算式は,次のように定義されている。 B社が行った3点見積法によるスケジュールリスク分析を表2に示す。 なお,プロジェクトの作業日数の確率分布は,正規分布(平均μ,分散σ2)に 近似できると仮定する。作業日数がμ±1σの範囲に収まる確率は0.68であり,μ±2σの範囲に収まる確率は0.95である。
設問3
3点見積法によるスケジュール見積りに関する次の記述中の に入れる正しい答えを,解答群の中から選べ。
M2及びM3の開発作業全体の平均作業日数は,e日になる。また,確率0.95で作業が完了する日数を,スケジュールリスクを考慮して見積もったとき,その最長作業日数は,平均作業日数にf日を加えた値である。
M2及びM3の開発作業全体の平均作業日数は,e日になる。また,確率0.95で作業が完了する日数を,スケジュールリスクを考慮して見積もったとき,その最長作業日数は,平均作業日数にf日を加えた値である。
e に関する解答群
- 24
- 25
- 27
- 29
f に関する解答群
- 2
- 2.2
- 4
- 4.4
解答選択欄
- e:
- f:
- e=イ
- f=エ
解説
〔eについて〕表2よりM3の新規開発の平均作業日数は12.7日、M2の改造は12.3日と分かります。したがって開発全体の平均作業日数はこの2つを足した25日になります。
∴e=イ:25
〔fについて〕
プロジェクトの作業日数の分布は平均μ,分散σ2の正規分布に近似でき、μ±2σの範囲に0.95の標本が収まります。
開発全体はμ=25、σ(標準偏差)=2.2なので、μ±2σの範囲は以下のように計算できます。
- μ-2σ=25-(2.2×2)=20.6(日)
- μ-1σ=25-(2.2×1)=23.8(日)
- μ+1σ=25+(2.2×1)=27.2(日)
- μ+2σ=25+(2.2×2)=29.4(日)
29.4-25=4.4(日)
∴f=エ:4.4
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