平成24年秋期試験午後問題 問7

午前試験免除制度対応!基本情報技術者試験のeラーニング【独習ゼミ】

問7 経営戦略・企業と法務

在庫管理に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。

 日用品メーカーであるZ社の工場では,在庫を次のように管理している。

〔Z社の工場での在庫管理〕
  • 生産した製品は,品質検査が完了するまで検品中在庫として管理する。製品によっては品質検査に数日掛かるものもある。
  • 品質検査の結果,良品と判定(以下,良品判定という)された場合は,その製品は良品在庫として管理する。
  • 品質検査の結果,不良品と判定(以下,不良品判定という)された場合は,その製品は不良品在庫として管理する。
  • 一度出荷した製品が返品された場合は,その製品は再度品質検査を行うので,検品中在庫として管理する。
  • 良品在庫の製品が破損した場合は,不良品在庫として管理する。
  • 不良品在庫の製品は,定期的に廃棄する。
  • 良品在庫から製品を出荷する。
 また,Z社では,1日の生産,品質検査,出荷,返品の受入れ,不良品の廃棄など 全ての作業が完了した時点で,次の手順で翌日の出荷に備えた業務を行っている。
手順①
当日の生産数,良品判定数,不良品判定数,返品数,破損数,廃棄数,出荷数,検品中在庫数,良品在庫数及び不良品在庫数を,在庫管理台帳に記入する。また,翌日の出荷予定数を在庫管理台帳に記入する。
手順②
当日の良品在庫数が翌日の出荷予定数に満たない場合は,本社に連絡して出荷日の変更を依頼する。
手順③
当日の在庫数が基準を満たしていない場合は,翌日に一定数を生産する手配を行う。基準は,良品在庫数が翌日の出荷予定数の2倍以上であり,かつ,検品中在庫数と良品在庫数の合計が翌日の出荷予定数の3倍以上であることとする。
 表1と表2は,10月20日の手順①の終了時点における,商品Aと商品Bの在庫管理台帳である。
pm07_1.png

設問1

表1中の に入れる正しい答えを,解答群の中から選べ。
a に関する解答群
  • 800
  • 900
  • 1,000
  • 1,100
  • 1,200
  • 1,300
  • 1,400
  • 1,500
b に関する解答群
  • 0
  • 20
  • 40
  • 60
  • 200
  • 220
  • 240
  • 260
c に関する解答群
  • 60
  • 80
  • 160
  • 180
  • 240
  • 260
  • 280
  • 360
解答選択欄
  • a:
  • b:
  • c:
  • a=
  • b=
  • c=

解説

aについて〕
〔Z社の工場での在庫管理〕(1)~(7)のうち検品中在庫数の増減要因となるものは以下の4つです。
増加要因
当日の生産数,返品数
減少要因
良品判定数,不良品判定数
ある日の作業完了時点での検品中在庫数は、前日の検品中在庫数からこれらが増減された数となります。よって前日の検品中在庫数から当日の検品中在庫数を算出する式は以下のように表すことができます。

 当日の検品在庫数=前日の検品在庫数+当日の生産数+返品数-良品判定数-不良品判定数

19日時点での数値をこの式に代入すると、前日18日の検品中在庫数を求めることが可能です。

 1,150=a+1,800+50-1,600-100
 1,150=a+150
 a1,000

a=ウ:1,000

bについて〕
破損品が生じた場合、良品在庫から不良品在庫に移されるため、破損品がなかったときの良品在庫数との差異から破損品数を求めます。

良品在庫の増減要因は以下の3つです。
増加要因
良品判定数
減少要因
出荷数,破損品数
良品在庫から出荷が行われ、当日に良品判定されたものが良品在庫数に算入されるため、この関係は以下の式で表すことができます。

 当日の良品在庫数=前日の良品在庫数-出荷数+良品判定数-破損品数

19日時点での数値をこの式に代入すると、19日の破損品数を求めることが可能です。

 2,880=3,000-1,700+1,600-b
 2,880=2,900-b
 b20

また、次のように不良品在庫数に着目して計算することもできます。

19日の廃棄数は180個で、前日終了時点での不良品在庫数180個がすべて廃棄されると考える事ができるため、19日の不良品在庫数は当日の「不良品判定数+破損数」だけで決定されます。

 不良品在庫数=不良品判定数+破損数
 120=100+b
 b20

b=イ:20

cについて〕
不良品在庫数の増減要因は以下の3つです。
増加要因
不良品判定数,破損数
減少要因
廃棄数
したがって20日の不良品在庫数は、19日の数値を以下の式に代入することで計算することができます。

 当日の不良品在庫数=前日の不良品在庫数-廃棄数+不良品判定数+破損数

 c=120-0+0+40
 c160

c=ウ:160

設問2

表2の商品Bに関する記述として適切な答えを,解答群の中から選べ。
解答群
  • 19日は,生産数が出荷数を下回ったので,良品在庫数が減少した。
  • 19日は,生産数と破損数の合計が良品判定数と不良品判定数の合計を下回ったので,検品中在庫数が減少した。
  • 19日も20日も廃棄数が0だったので,良品在庫数が減少した。
  • 20日は,不良品判定数と廃棄数は0であったが返品があったので,不良品在庫数が増加した。
  • 20日は,返品が少量あったものの生産がなかったので,品質検査を行ったことによって検品中在庫数が大きく減少した。
解答選択欄
  •  
  •  

解説

  • 良品在庫数が減少した原因は、良品判定数(180個)が良品在庫の減少要因である出荷数と破損数の合計(190個)を下回ったからです。
  • 破損品が発生しても、良品在庫から不良品在庫に移されるだけなので検品中在庫数には影響ありません。検品中在庫数が20個減少したのは生産数と返品数の合計(170個)が良品判定数と不良品判定数の合計(190個)を下回ったからです。
  • 良品在庫数の増減と廃棄数には関係がありません。
  • 返品は不良品在庫ではなく検品中在庫として管理されるため誤りです。不良品判定数が0個にも関わらず不良品在庫が増加したのは20個の破損品が発生したからです。
  • 正しい。20日は生産がなく、品質検査が進んだため検品中在庫数は19日(220個)、20日(90個)と大きく減少しています。

設問3

商品A,Bに関する10月20日の手順①の終了後の,翌日の出荷に備えた業務の組合せとして正しい答えを,解答群の中から選べ。
解答群
pm07_2.png
解答選択欄
  •  
  •  

解説

手順①終了後に行う②、③について再確認しておきます。
手順②
当日の良品在庫数が翌日の出荷予定数に満たない場合は,本社に連絡して出荷日の変更を依頼する。
「良品在庫数<翌日出荷数」であれば本社に連絡する
手順③
当日の在庫数が基準を満たしていない場合は,翌日に一定数を生産する手配を行う。基準は,良品在庫数が翌日の出荷予定数の 2 倍以上であり,かつ,検品中在庫数と良品在庫数の合計が翌日の出荷予定数の 3 倍以上であることとする。
「良品在庫数<翌日出荷数×2」または「良品在庫数+検品中在庫数<翌日出荷数×3」であれば翌日に生産する手配を行う
〔商品Aについて〕
21日の出荷数…1,500個
20日の良品在庫数…2,240個
20日の検品中在庫数…2,250個

[手順②]
良品在庫数(2,240個)が出荷数(1,500個)を上回っているため本社への連絡は行いません。
[手順③]
良品在庫数(2,240個)が翌日の出荷数の2倍(3,000個)に満たないため、翌日に生産する手配を行います。

したがって商品Aについては「21日の生産を手配する」が適切です。

〔商品Bについて〕
21日の出荷数…120個
20日の良品在庫数…260個
20日の検品中在庫数…90個

[手順②]
良品在庫数(260個)が出荷数(120個)を上回っているため本社への連絡は行いません。
[手順③]
良品在庫数(260個)は翌日の出荷数の2倍(240個)を上回っています。しかし良品在庫数と検品中在庫数の合計(350個)が翌日出荷数の3倍(360個)に満たないため翌日に生産する手配を行います。

したがって商品Bについても「21日の生産を手配する」が適切です。

両方とも「21日の生産を手配する」になるので正しい組合せは「ア」になります。

∴ア

設問4

在庫削減の取組みに関する次の記述中の に入れる適切な答えを,解答群の中から選べ。

 Z社では余剰在庫が問題と捉えており,キャッシュフローと棚卸資産回転率の改善のために,在庫を削減したいと考えている。良品在庫と検品中在庫の削減は,dことになる。そこで企画課は,在庫削減の施策としてeことを検討した。
d に関する解答群
  • キャッシュフローと棚卸資産の両方を減少させる
  • キャッシュフローと棚卸資産の両方を増加させる
  • キャッシュフローを減少させ,棚卸資産を増加させる
  • キャッシュフローを増加させ,棚卸資産を減少させる
e に関する解答群
  • 手順②で良品在庫数が不足したときは,検品中在庫からも出荷できるように変更する
  • 手順③で翌日の生産の手配を判断する基準の倍率を下げる
  • 手順③で良品在庫数と検品中在庫数が基準を満たさなかったときに手配する翌日の生産数を増加する
  • 廃棄の頻度を上げる
  • 返品があったときは,検品中在庫として管理するのではなく,良品在庫として管理する
  • 良品在庫の製品が破損したときは,不良品在庫として管理するのではなく,検品中在庫として管理する
解答選択欄
  • d:
  • e:
  • d=
  • e=

解説

dについて〕
キャッシュフロー(CF)は企業会計で使われる概念で、一定期間における現金の流入出の金額を表します。キャッシュフローが増加するということは企業内に現金が多くとどまるということです。

製品や仕掛品、原材料などの在庫品は棚卸資産と呼ばれます。よって在庫を削減することは棚卸資産を減少させることに繋がります。
また棚卸資産は販売しなければ現金化できないため、それらが増加することはキャッシュフローの減少要因とされます。逆に設問で検討されている在庫の削減にはキャッシュフローの増加効果が期待できます。

d=エ:キャッシュフローを増加させ,棚卸資産を減少させる

eについて〕
  • 検品中在庫は品質検査前で良品・不良品の判定前の状態です。不良品をそのまま出荷してしまう可能性があるので不適切です。
  • 正しい。安全在庫の基準を下げ生産を抑制することで、平均在庫量を減少させることができます。
  • 生産数を増加すると平均在庫数が増えるため、在庫数の削減に繋がりません。
  • キャッシュフローの改善のためには良品在庫と検品中在庫の削減することが求められています。廃棄するのは不良在庫なので、廃棄の頻度を上げても良品在庫と検品中在庫を減らすことはできません。
  • 管理する区分が変わるだけで在庫数の削減には繋がらないため不適切です。また、返品は再検査を行わなくてはならないため良品在庫として管理してはいけません。
  • 管理する区分が変わるだけで在庫数の削減には繋がらないため不適切です。また、破損品を検品中在庫として管理すると不良品とわかっているものを再検査する無駄が生じてしまいます。

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