平成29年春期試験午後問題 問7
問7 システム戦略
在庫補充方法の変更に関する次の記述を読んで,設問1~3に答えよ。
食品メーカーのM社では,コスト削減やキャッシュフローの改善を目的として,自社の在庫補充方法を変更して在庫量の削減を図ることにした。従来は,毎週月曜日に,保管を委託している全ての配送倉庫の全商品について,配送倉庫ごとに,当該週を含む4週間分の出荷予想量と在庫量を比較し,出荷予想量に満たない量を工場から補充していた。このたびM社では,出荷予想量を算出する期間を見直し,配送倉庫,商品群,賞味期限ごとに在庫基準量を設定し,在庫量が在庫基準量に満たない場合,その差を在庫補充量として補充することにした。この新しい在庫補充方法を次に示す。
〔新しい在庫補充方法〕
食品メーカーのM社では,コスト削減やキャッシュフローの改善を目的として,自社の在庫補充方法を変更して在庫量の削減を図ることにした。従来は,毎週月曜日に,保管を委託している全ての配送倉庫の全商品について,配送倉庫ごとに,当該週を含む4週間分の出荷予想量と在庫量を比較し,出荷予想量に満たない量を工場から補充していた。このたびM社では,出荷予想量を算出する期間を見直し,配送倉庫,商品群,賞味期限ごとに在庫基準量を設定し,在庫量が在庫基準量に満たない場合,その差を在庫補充量として補充することにした。この新しい在庫補充方法を次に示す。
〔新しい在庫補充方法〕
- 販売量が多い商品群A,中程度の商品群B,少ない商品群Cの商品群別に管理する。
- 賞味期限が短い商品(以下,短期品という)は,全ての商品群について2週間分の出荷予想量を在庫基準量とする。
- 賞味期限が中程度の商品(以下,中期品という)は,商品群Aについて2週間分の出荷予想量を,商品群B及びCについて3週間分の出荷予想量を在庫基準量とする。
- 賞味期限が長い商品(以下,長期品という)は,全ての商品群について3週間分の出荷予想量を在庫基準量とする。
- 配送倉庫の中には,工場から遠く,すぐに在庫を補充できない配送倉庫(以下,遠隔地倉庫という)がある。遠隔地倉庫における商品群Aの商品の在庫基準量は,(2)~(4)にかかわらず次のとおりとする。
- 短期品は,2週間分の出荷予想量を在庫基準量とする。
- 中期品は,3週間分の出荷予想量を在庫基準量とする。
- 長期品は,4週間分の出荷予想量を在庫基準量とする。
- 遠隔地倉庫における商品群B及びCの商品は全て,(2)~(4)にかかわらず4週間分の出荷予想量を在庫基準量とする。
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設問1
在庫量を削減することによって期待される効果に関する次の記述中の に入れる適切な答えを,解答群の中から選べ。
M社では,在庫量を削減することによって,原材料購入から商品販売までの期間を短くできるのでaできる。また,bの削減も期待できる。さらに,在庫として保有する期間が短くなるので,商品のcについても期待できる。
M社では,在庫量を削減することによって,原材料購入から商品販売までの期間を短くできるのでaできる。また,bの削減も期待できる。さらに,在庫として保有する期間が短くなるので,商品のcについても期待できる。
a に関する解答群
- 売掛金の回収期間を短縮
- 買掛金の支払期間を延長
- キャッシュの回収期間を短縮
- 資金の調達期間を延長
b に関する解答群
- 在庫スペースの縮小による保管コスト
- 商品種類の減少による管理コスト
- 商品種類の減少による商品開発コスト
- フリーキャッシュフローの減少による事務コスト
c に関する解答群
- 欠品によって販売機会を逸失するリスクの低減
- 限界利益率の低下
- 賞味期限切れが発生するリスクの低減
- 損益分岐点販売量の増加
解答選択欄
- a:
- b:
- c:
- a=ウ
- b=ア
- c=ウ
解説
〔aについて〕原材料購入から販売までの期間が短くなることで、在庫が現金化されるまでの期間を短縮できます。
在庫などの棚卸資産は組織の資金が形を変えたものなので、余分に抱える分だけ使える現金等が減ることを意味します。このためキャッシュ回収期間の短縮はキャッシュフローに好影響を与えます。
∴a=ウ:キャッシュの回収期間を短縮
〔bについて〕
ある程度の在庫は欠品を防ぐために必要です。しかし過剰在庫は、保管スペースの増加に伴う光熱費・賃貸料などの維持保管コスト、および無駄な運搬や管理作業などの余計なコストを生みます。在庫が削減されることによって、これらの在庫コストの削減が期待できます。
∴b=ア:在庫スペースの縮小による保管コスト
〔cについて〕
在庫を多く抱えると保有中の品質劣化や陳腐化によって商品価値の低下が生じるリスクが増加します。特にM社は食品メーカーなので賞味期限切れによる廃棄リスクが存在します。在庫削減により原材料購入から販売までの期間が短縮されることで、賞味期限切れが生じるリスクを低減できます。
∴c=ウ:賞味期限切れが発生するリスクの低減
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設問2
M社では,新しい在庫補充方法に合わせて在庫管理システムの変更を検討している。その準備として,在庫基準量を決定するために表1に示す決定表を作成した。表1中の に入れる正しい答えを,解答群の中から選ペ。
d に関する解答群
e に関する解答群
解答選択欄
- d:
- e:
- d=カ
- e=エ
解説
決定表(デシジョンテーブル)は、ある事象について条件や選択肢を表形式で整理し、記述された条件・選択肢の組合せによってどのような処理を行うべきかを列挙したものです。下記の例でいえば、表中の二重線より上が条件を記述する部分で、条件が成立するときは「Y」(Yes)、不成立の時は「N」(No)を記入します。二重線より下が実行される処理を記述する部分で、条件の組合せによって実行すべき処理に「X」(eXecute=実行)を記入します。〔dについて〕
決定表のどこに注目するかにより解き方が異なりますが、ここでは遠隔地倉庫における商品群Aを示す以下の3列に注目します。遠隔地倉庫の場合、商品群Aの在庫基準量は以下のようになっています。
- 短期品 … 2週間分
- 中期品 … 3週間分
- 長期品 … 4週間分
∴d=カ:
〔eについて〕
上でも少し触れましたがeのうち一番右の列は、遠隔地倉庫、かつ、商品群Aで長期品の場合なので4週間分になります。
また残りの3列は、遠隔地倉庫ではない商品群B,Cに関する処理です。この3列も上記の3列とdの条件判定が同じなので、左から"長期品","中期品","短期品"の順で並んでるとわかります。遠隔地でない場合の在庫基準量を求める手順は、〔新しい在庫補充方法〕(2)~(4)に記述されています。これを図で表すと次のようになります。この手順に従い商品群B,Cの在庫基準量を判断すると長期品と中期品は3週間分、短期品は2週間分になります。したがって左の列から順に、3週間分、3週間分、2週間分、4週間分に"X"が付いている「エ」が適切です。
∴e=エ:
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設問3
M社では,新しい在庫補充方法による在庫量の削減効果を,遠隔地倉庫ではないN配送倉庫について見積もることにした。表2は,ある月曜日におけるN配送倉庫の在庫量及び4週間分の出荷予想量である。N配送倉庫の在庫補充量及び在庫量に関する次の記述中の に入れる適切な答えを,解答群の中から選べ。新しい在庫補充方法に基づく商品Pの在庫補充量はf百箱となる。また,商品Rの在庫補充量は,従来の在庫補充方法に基づく在庫補充量に比べてg百箱の削減となる。商品P,Q,R,S及びTの合計では,新しい在庫補充方法の導入によって従来の在庫補充方法に比べて,補充後の在庫量をh百箱削減できる。
f,g,h に関する解答群
- 30
- 60
- 70
- 120
- 170
- 180
- 230
- 300
- 400
- 440
解答選択欄
- f:
- g:
- h:
- f=イ
- g=ア
- h=ケ
解説
〔fについて〕商品Pが分類されている「商品群A,短期品」の在庫基準量は2週間分です。すなわち第1週と第2週の出荷予想量を足した量が在庫基準量になります。
在庫基準量=100+80=180
在庫の補充は、現在の在庫量が在庫基準量に満たない分だけ行われます。したがって在庫基準量180百箱から在庫量120百箱を引いた60百箱が商品Pの在庫補充量になります。
在庫補充量=180-120=60
∴f=イ:60
〔gについて〕
商品Rが分類されている「商品群B,中期品」の在庫基準量は3週間分です。すなわち第1週~第3週の出荷予想量を足した量が在庫基準量になります。これを一律4週間分を在庫基準量としていた従来の補充方法と比較します。
[従来の補充方法]
在庫基準量=30+40+40+30=140
在庫補充量=140-30=110
[新しい補充方法]
在庫基準量=30+40+40=110
在庫補充量=110-30=80
削減量=110-80=30
つまり4週目の集荷予想量が在庫基準量から除外された分だけ削減可能です。
∴g=ア:30
〔hについて〕
表2の全ての商品に在庫基準量(○週間分)を対応させると以下のようになります。補充後の在庫量は在庫基準量と等しくなります。このため新しい補充方法への変更によって、在庫基準量の計算から除外される以下の範囲が削減量になります。これらを全部足し合わせると、
50+70+100+120+30+20+10=400
したがって400百箱が適切です。
∴h=ケ:400
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