平成21年秋期試験午後問題 問7
問7 システム戦略
情報システムの効果見積りに関する次の記述を読んで,設問1,2に答えよ。
日用品メーカーであるT社の売上高は年間4,000百万円,製品の製造に要する資材の調達費(以下,資材調達費という)は年間2,000百万円である。T社の企画課では,開発を予定している営業支援システム,資材調達システム,契約管理システムの効果を見積もることになった。各システムの概要を,表1に示す。
日用品メーカーであるT社の売上高は年間4,000百万円,製品の製造に要する資材の調達費(以下,資材調達費という)は年間2,000百万円である。T社の企画課では,開発を予定している営業支援システム,資材調達システム,契約管理システムの効果を見積もることになった。各システムの概要を,表1に示す。
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設問1
資材調達システムの投資回収期間に関する次の記述中の に入れる正しい答えを,解答群の中から選べ。
企画課では,資材調達システムについて,開発と運用のための投資を回収できるまでの期間(以下,投資回収期間という)を,年間の売上高が今後も一定であるとして計算した。資材調達システムの投資回収期間は,見積もったaまでの期間を計算することで求められる。資材調達システムの投資回収期間は,bである。
企画課では,資材調達システムについて,開発と運用のための投資を回収できるまでの期間(以下,投資回収期間という)を,年間の売上高が今後も一定であるとして計算した。資材調達システムの投資回収期間は,見積もったaまでの期間を計算することで求められる。資材調達システムの投資回収期間は,bである。
a に関する解答群
- 効果が開発費と運用費の合計を上回る
- 効果が開発費と運用費の合計を下回る
- 効果と運用費の合計が開発費を上回る
- 効果と運用費の合計が開発費を下回る
b に関する解答群
- 1年未満
- 1年以上2年未満
- 2年以上3年未満
- 3年以上
解答選択欄
- a:
- b:
- a=ア
- b=ア
解説
〔aについて〕投資回収期間とは、当初の投資額が、当該設備(一般に資産)の運用による年々の利益金によって、回収できるまでの期間です。ざっくり言うと"元がとれるまで"の期間ということができます。
つまり、年々の利益金(効果)が投資にかかった費用(開発費+運用費)の合計額を上回った時が投資額が回収できたと考えます。
∴a=ア:効果が開発費と運用費の合計を上回る
〔bについて〕
資材調達システムを開発運用すると、年間資材調達費を2%削減する効果が見積られています。
T社の現在の資材調達費は、2000百万円なので、
1年当たりの効果額は、2000×0.02=40(百万円)
また、開発費は30百万円、運用費は2百万円/年なので、
費用=30+(2×運用年数)
となるので、運用1年目の費用合計は32百万円です。
上記の計算から資材調達システムを開発した場合、1年目の効果額が40百万円、1年運用した場合の総費用が32百万円なので、1年未満で投資額を回収できる見込みとわかります。
∴b=ア:1年未満
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設問2
各システムの期待効果に関する次の記途中の に入れる正しい答えを,解答群の中から選べ。
企画課では,各システムの効果見積りを,営業利益における期待効果(以下,営業利益効果という)として計算することにした。各システムの開発費は,5年で定額償却する。また,減価償却費とシステムの運用費は,販売費及び一般管理費(以下,販管費という)に計上する。
T社の年間損益計算の抜粋を,表2に示す。〔営業支援システムを開発した場合〕
営業支援システムの効果は売上高の増加であるが,売上高が増えると,それに伴って資材調達などにかかる売上原価も増える。さらに,営業支援システムの利用に伴って,減価償却費や運用費が発生する。営業支援システムの開発によって,売上高売上原価率(売上原価÷売上高)は変わらず,販管費は減価償却費10百万円と運用費2百万円を合わせて12百万円増えるので,営業利益効果は,c百万円となる。
〔資材調達システムを開発した場合〕
資材調達システムの効果見積りは資材調達費の2%削減なので,dを40百万円削減できる。資材調達システムの利用によって,販管費は減価償却費6百万円と運用費2百万円を合わせて8百万円増えるので,営業利益効果は32百万円となる。
〔契約管理システムを開発した場合〕
契約管理システムの利用によって,間接部門である法務課の労務費を5百万円削減できる。一方,減価償却費1.6百万円と運用費0.4百万円を合わせて2百万円が発生する。したがって,eとなる。
〔営業支援システムと資材調達システムを開発し,同時に利用した場合〕
資材調達システムの利用によってfが期待できる。営業支援システムを開発した場合の営業利益効果は,売上高売上原価率が変わらないという前提で計算したがfによってc百万円g営業利益効果となる。したがって,営業支援システムと資材調達システムを開発し同時に利用することで得られる営業利益効果は,それぞれの営業利益効果の合計g。
企画課では,各システムの効果見積りを,営業利益における期待効果(以下,営業利益効果という)として計算することにした。各システムの開発費は,5年で定額償却する。また,減価償却費とシステムの運用費は,販売費及び一般管理費(以下,販管費という)に計上する。
T社の年間損益計算の抜粋を,表2に示す。〔営業支援システムを開発した場合〕
営業支援システムの効果は売上高の増加であるが,売上高が増えると,それに伴って資材調達などにかかる売上原価も増える。さらに,営業支援システムの利用に伴って,減価償却費や運用費が発生する。営業支援システムの開発によって,売上高売上原価率(売上原価÷売上高)は変わらず,販管費は減価償却費10百万円と運用費2百万円を合わせて12百万円増えるので,営業利益効果は,c百万円となる。
〔資材調達システムを開発した場合〕
資材調達システムの効果見積りは資材調達費の2%削減なので,dを40百万円削減できる。資材調達システムの利用によって,販管費は減価償却費6百万円と運用費2百万円を合わせて8百万円増えるので,営業利益効果は32百万円となる。
〔契約管理システムを開発した場合〕
契約管理システムの利用によって,間接部門である法務課の労務費を5百万円削減できる。一方,減価償却費1.6百万円と運用費0.4百万円を合わせて2百万円が発生する。したがって,eとなる。
〔営業支援システムと資材調達システムを開発し,同時に利用した場合〕
資材調達システムの利用によってfが期待できる。営業支援システムを開発した場合の営業利益効果は,売上高売上原価率が変わらないという前提で計算したがfによってc百万円g営業利益効果となる。したがって,営業支援システムと資材調達システムを開発し同時に利用することで得られる営業利益効果は,それぞれの営業利益効果の合計g。
c に関する解答群
- 18
- 30
- 108
- 120
d に関する解答群
- 売上原価
- 売上総利益
- 売上高
- 営業利益
- 販管費
e に関する解答群
- 売上原価を3百万円削減でき,営業利益効果は3百万円
- 売上原価を5百万円削減でき,営業利益効果は5百万円
- 販管費を3百万円削減でき,営業利益効果は3百万円
- 販管費を5百万円削減でき,営業利益効果は5百万円
f に関する解答群
- 売上高売上原価率の上昇
- 売上高売上原価率の低下
- 売上高の増加
- 売上高の減少
g に関する解答群
- と等しい
- を上回る
- を下回る
解答選択欄
- c:
- d:
- e:
- f:
- g:
- c=ア
- d=ア
- e=ウ
- f=イ
- g=イ
解説
〔cについて〕営業支援システムの導入で年間売上高が3%上昇させる効果が見積られています。問題文にもあるように売上高が上昇するとそれに伴って資材調達費などの売上原価が増えることになるので、
導入後の売上高=4,000×1.03=4,120(百万円/年)
導入後の売上原価=3,000×1.03=3,090(百万円/年)
また、販管費の上昇は12百万円です。これらの数値をもとに損益計算書を見積もると、以下のようになります。この予定される営業利益218百万円を、営業支援システム導入前の200百万円と比較すると、営業支援システムを導入することで18百万円の営業利益効果があることになります。
∴c=ア:18
〔dについて〕
資材調達システムの導入によって、期待される効果は資材調達費の2%削減です。「営業支援システムを開発した場合」の記述中に「資材調達などにかかる売上原価を増える」とあることから、資材調達費は、変動費である売上原価に分類されていることがわかります。したがって資材調達システムの導入によって削減される損益計算書中の項目は、売上原価となります。
ちなみに資材調達システム導入後の予定損益計算書は以下のようになります。∴d=ア:売上原価
〔eについて〕
契約管理システムの導入によって削減される労務費は、損益計算書上では間接費である販管費に分類されます。システム導入によって販管費5百万円が削減できますが、減価償却費1.6百万円+運用費0.4百万円が発生するので、実質的には販管費3百万円の削減効果となり、営業利益は減少した費用と同額の3百万円が増加することになります。
契約管理システム導入後の予定損益計算書は以下のようになります。∴e=ウ:販管費を3百万円削減でき、営業利益効果は3百万円
〔fについて〕
営業支援システム、資材調達システムの二つを導入すると「売上高3%上昇」「資材調達費2%削減」の双方の効果が期待できます。これによって営業支援システムの導入時に営業利益の増加のネックとなっていた売上原価の増加を抑えることができるようになります。
2つのシステムを導入した場合の予定損益計算書は以下のようになります。営業システムのみを導入した場合と、2つのシステムを同時に導入した場合の売上高原価率及び売上高は以下のように計算できます。
- 営業システムのみ
- 売上高=4,120(百万円)
売上高原価率=3,090/4,120×100=75% - 2つのシステムを同時に導入
- 売上高=4,120(百万円)
売上高原価率=3,028.2/4,120×100=73.5%
∴f=イ:売上高売上原価率の低下
〔gについて〕
売上高が同じの場合売上原価率が低下すれば、営業利益は上昇します。それぞれのケースにおける営業利益効果額は、
- 営業支援システム単独=18百万円
- 資材調達システム単独=32百万円
- 2つのシステムを同時=71.2百万円
∴g=イ:を上回る
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