平成29年秋期試験午後問題 問7

午前試験免除制度対応!基本情報技術者試験のeラーニング【独習ゼミ】

問7 システム戦略

購買管理システムの導入による業務改善効果に関する次の記述を読んで,設問1,2に答えよ。

 日用品メーカーのC社では,ソフトウェアパッケージを用いた購買管理システムの導入を進めており,システムの要件定義を終えたところである。定義された要件には,ソフトウェアパッケージの機能を活用できる要件と,追加でシステム開発が必要な要件(以下,システム要件という)がある。全てのシステム要件を実現すると,開発費が当初の予算を超えることが分かった。そこで,各システム要件を実現した場合に削減される1年間のコスト(以下,年間効果という)と必要な開発費とを併せて評価し,実現するシステム要件を決定することにした。この決定に当たっては,購買管理システムの保守運用費は考慮しないものとする。
 C社は,システム要件8件について評価することにした。

設問1

システム要件を実現(以下,システム化という)するための開発費と年間効果の試算に関する次の記述中の に入れる正しい答えを,解答群の中から選べ。ここで,c1とc2に入れる答えは,cに関する解答群の中から組合せとして正しいものを選ぶものとする。
  • システム化するための開発費と年間効果を試算する。また,各システム要件を,"必ず実現したい"という要件(以下,必須要件という)と,"できれば実現したい"という要件(以下,要望要件という)に分類する。
  • 必須要件の一つである"仕入先からの注文請書を購買管理システムで処理できるようにする"の年間効果を試算する。購買管理システムは仕入先も利用するものとし,システム化によって,C社での注文請書の確認と再提出依頼の作業は次のようになる。
    1. 仕入先からファックスで送付されてきた注文請書の内容と注文書の内容の目視での照合に代えて,購買管理システム上のデータチェックで照合を行う。
    2. データチェックで誤りが見つかったときに,仕入先への注文請書の再提出の依頼をWeb画面で行う。
    3. 再提出された注文請書の内容と注文書の内容の照合(以下,再照合という)も購買管理システムで行う。
     上記①~③の年間効果を試算するために,注文請書の確認と再提出依頼の作業状況を調査して条件を設定した。その結果を,表1に示す。将来値はシステム化後の作業状況を想定して設定した値である。ここで,再照合時に誤りは発生しないものとする。
    pm07_1.png
  • 表1の将来値を設定するに当たり,注文請書と注文書との目視での照合及び再照合の作業に要する時間は,システム化によってaと想定した。また,仕入先がWebを介して注文書の確認と注文請書の送信を行うことによって,注文請書の誤りの発生枚数はbと想定した。
     1年当たりの稼働日数を240日とすると,現状で注文請書の確認,再提出依頼及び再照合の作業に要する年間費用はc1千円であり,システム化された場合はc2千円となって,この差額が年間効果となる。
 全てのシステム要件に対する年間効果の試算と分類の結果を,表2に示す。
pm07_2.png
a,b に関する解答群
  • 増加する
  • 減少するがゼロにならない
  • 不要になる
  • 変わらない
c に関する解答群
pm07_3.png
解答選択欄
  • a:
  • b:
  • c:
  • a=
  • b=
  • c=

解説

表1「年間効果を試算するための条件」をもとに答えを導きます。
pm07_1.png
aについて〕
C社の注文請書の処理業務のうち購買システムの導入によって自動化される作業は次の2点です。
  • 目視で行っている注文書と注文請書の照合作業をシステム上で行う
  • 注文請書の再提出作業をWeb上で行う
  • 再提出された注文請書の照合をシステム上で行う
システム化により照合および再照合作業(以下、照合作業)はシステム上で行われるようになるため、目視による照合作業は不要になります。表1ではこれを踏まえ、照合作業に要する時間の将来値を0分と見積もっています。つまりシステム化によって人による照合作業をゼロにできると想定していることが分かります。したがってaには「不要になる」が入ります。

a=ウ:不要になる

bについて〕
表1では、注文請書の誤りの発生回数の将来値を3枚/日と見積もっています。現在値は18枚/日ですのでシステム化によって誤りの件数は減少すると想定しています。しかしゼロではありません。したがってbには「減少するがゼロにはならない」が入ります。

b=イ:減少するがゼロにはならない枚/日

cについて〕
[現状の年間費用]
現状の注文請書の処理業務において必要な作業は次の通りです。
  • 注文請書の照合…200枚/日
  • 再提出依頼…18枚/日
  • 再照合…18枚/日
照合作業は5分/枚、再提出依頼は10分/枚を要するので1日の作業時間合計は、

 200×5+18×10+18×5=1,270(分)

1年間の稼働日数は240日なので年間に換算すると、

 1,270×240=304,800(分)=5,080(時間)

作業に要する人件費は1,400円/時間なので、

 5,080×1,400=7,112,000(円)=7,112(千円)

[システム化後の年間費用]
システム化後は、注文請書の処理作業が以下のように減少します。
  • 注文請書の照合…0枚/日
  • 再提出依頼…3枚/日
  • 再照合…0枚/日
再提出依頼は5分/枚を要するので1日の作業時間合計は、

 3×5=15(分)

1年間の稼働日数は240日なので年間に換算すると、

 15×240=3,600(分)=60(時間)

作業に要する人件費は1,400円/時間なので、

 60×1,400=84,000(円)=84(千円)

c1=7,112、c2=84 なので「エ」の組合せが適切です。

c=エ

設問2

開発費と年間効果の評価に関する次の記述中の に入れる正しい答えを,解答群の中から選べ。

 表2に示した三つの必須要件については全て採用するものとし,五つの要望要件については開発費と年間効果を評価して,採用,不採用を決定することにした。
 必須要件を含めて購買管理システムのシステム化のための開発費が予算の30,000千円に収まるように要望要件を選択することにした。

 選択に当たり,開発費に対する年間効果の割合(以下,効果率という)も選択条件とした。要望要件に分類したシステム要件の年間効果と効果率を,図1に示す。
pm07_4.png
  • SYS908は,効果率も年間効果も最も大きく,開発費が予算に収まるので,採用とした。また,効果率も年間効果も最も小さいSYS906は不採用とした。
  • 続いて,残りの三つの要望要件から,開発費が予算に収まり,年間効果が最大になるような選択を行うこととした。
    1. SYS905を採用したとき,開発費の予算を考えるとd。この場合,開発費の総額は28,950千円となり,年間効果は22,948千円となる。
    2. 一方,SYS907を採用したとき,開発費の予算を考えるとe。この場合,開発費の総額は29,030千円となり,年間効果は23,258千円となる。
 (1),(2)の評価の結果,開発費が予算に収まり,年間効果を最大にするには,要望要件はSYS908に加えてfを採用すればよい。
d に関する解答群
  • SYS903もSYS907も採用できる
  • SYS903もSYS907も採用できない
  • SYS903は採用できるが,SYS907は採用できない
  • SYS907は採用できるが,SYS903は採用できない
e に関する解答群
  • SYS903もSYS905も採用できる
  • SYS903もSYS905も採用できない
  • SYS903は採用できるが,SYS905は採用できない
  • SYS905は採用できるが,SYS903は採用できない
f に関する解答群
  • SYS903とSYS905
  • SYS903とSYS907
  • SYS905
  • SYS907
解答選択欄
  • d:
  • e:
  • f:
  • d=
  • e=
  • f=

解説

表2「システム要件に対する年間効果の試算と分類の結果」をもとに答えを導きます。
pm07_2.png
dについて〕
まず必須要件であるSYS901・SYS902・SYS904に、採用が決定しているSYS908を加えて開発費の合計を求めます。

 5,800+6,200+12,400+1,800=26,200(千円)

SYS905の開発費は2,750千円なので、SYS905を採用した場合の開発費は次の通りです。

 26,200+2,750=28,950(千円)

開発費の上限は30,000千円なので、SYS905を採用した場合、残りの予算額は1,050千円になります。SYS903およびSYS907の開発費は、それぞれ1,200千円、1,630千円なので、開発費予算を考えるとSYS903およびSYS907のどちらも採用できません。

d=イ:SYS903もSYS907も採用できない

eについて〕
SYS907の開発費は1,630千円なので、SYS907を採用した場合の開発費は次の通りです。

 26,200+1,630=27,830(千円)

開発費の上限は30,000千円なので、SYS907を採用した場合、残りの予算額は2,170千円になります。SYS903およびSYS905の開発費は、それぞれ1,200千円、2,750千円なので、開発費予算を考えるとSYS903は採用できますが、SYS905は採用できません。

e=ウ:SYS903は採用できるが,SYS905は採用できない

fについて〕
それぞれの要件を採用した場合に得られる年間効果額を計算します。
  • 予算の上限を超えてしまうためSYS903とSYS905は同時に採用できません。
  • 年間効果は、SYS903が670千円、SYS907が1,280千円なので、
     670+1,280=1,950(千円)
  • SYS905を単独採用した場合の年間効果は1,640千円です。
  • SYS907を単独採用した場合の年間効果は1,280千円です。
したがって年間効果はSYS903とSYS907を採用した場合に最も大きくなります。

f=イ:SYS903とSYS907

Pagetop