基本情報技術者過去問題 平成29年春期 午後問4

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問4 ネットワーク

無線LANにおけるデータの送信に関する次の記述を読んで,設問1~3に答えよ。

 無線LANではフレームを使用してデータを送信する。フレームにはデータフレームやACKフレームがあり,データはデータフレームに格納して送信する。データフレームには,フレームの制御情報とTCP/IPパケットが含まれる。一つのデータフレームに格納できるデータ長には上限があり,上限を超えるデータを送信したいときは,データを複数のデータフレームに分けて送信する。無線LANでは,複数の機器から送信されるフレームがなるべく衝突しないように工夫して,フレームを送信する。

 無線LANにおけるデータフレーム送信の大まかな流れを,(1)~(7)に示す(図1参照)。ここで,W1,W2は待機時間を表す量である。W2はあらかじめ決められた値で,W1はW2を超えるように毎回決められるランダムな値である。
  • データフレームを送信しようとする機器は,送信前に他の機器がフレームを送信しているかどうかを調べる。
  • 他の機器がフレームを送信していれば,そのフレームの送信が終了するまで待機する。
  • 他の機器がフレームを送信していなければ,W1だけ待機する。
  • W1の間に,他の機器がフレームの送信を開始しなければ,データフレームを送信し,受信側機器からのACKフレームの到着を待つ。
  • W1の間に,他の機器がフレームの送信を開始したときは,(2)に戻る。
  • データフレームを受信した機器は,データフレームを受信後,W2だけ待機した後,ACKフレームを送信する。
  • 複数のデータフレームを送信する必要があるときは,(1)~(6)を繰り返す。
 一つのデータフレームに格納できる最大データ長(フレームの制御情報やTCP/IPパケットのヘッダーなどの情報を除くデータ本体)を1,460バイトとする。物理層の通信速度が54Mビット/秒のとき,最大データ長のデータを格納したデータフレームの送信時間は248マイクロ秒,ACKフレームの送信時間は24マイクロ秒である。W1の平均とW2が,物理層の通信速度に関係なく,それぞれ101.5マイクロ秒と16マイクロ秒であるとき,データ送信速度(単位時間に送信できるデータ量)は,最大でaMビット/秒程度になる。

 次に,三台の機器A,B及びCがある場合について考える。①機器Aだけが機器Cに対して1Mバイトのデータの送信処理を行ったときと,②機器Aと機器Bのそれぞれが機器Cに対して,それぞれ1Mバイトのデータの送信処理を同時に開始したときとを比較すると,機器Aから機器Cへのデータの送信処理に掛かる時間は,平均的にはb。ここで,機器Aと機器Cの間,及び機器Bと機器Cの間それぞれの物理層の通信速度は54Mビット/秒とする。また,フレームの衝突はなく,フレームの再送信も行われなかったものとする。

設問1

本文中の に入れる正しい答えを,解答群の中から選べ。
a に関する解答群
  • 4
  • 6
  • 30
  • 47
b に関する解答群
  • ①の方が短い
  • ②の方が短い
  • 等しい

解答選択欄

  • a:
  • b:

解答

  • a=
  • b=

解説

aについて〕
無線LANの通信では(3)W1待機~(6)ACKフレーム送信までのサイクルを繰り返します。つまりこのサイクルを何回繰り返せるかで送信データ量が決まります。まず1サイクル当たりの時間を設問で与えられている以下の値を用いて計算します。
  • (3)W1待機…101.5マイクロ秒
  • (4)データフレーム送信…248マイクロ秒
  • (5)W2待機…16マイクロ秒
  • (6)ACKフレーム送信…24マイクロ秒
 1サイクル=(3)+(4)+(5)+(6)
=101.5+248+16+24=389.5(マイクロ秒)

次に1秒間のサイクル数を求めます。(計算を簡略化するために近似した400マイクロ秒で計算した方がよいかもしれません…)

 1÷0.0003895≒2,567(回)

1データフレーム当たりの最大データ長である1,460バイトにサイクル数を掛けて、1秒当たりの最大データ量を求めます。

 1,460×2,567=3,747,820(バイト)

答えはビット単位なので、さらに8を掛けます。

 3,747,820×8=29,982,560(ビット)≒30(Mビット)

a=ウ:30

bについて〕
データフレーム送信のシーケンスに従えば、W1待機の間に他の端末からのフレーム送出を検出した送信側機器は、他の端末のフレーム送出完了を待った後、再度W1待機してから送信を試みます。無線LANネットワークに複数の端末が存在する環境では、この待ち時間が余分に生じる分だけ、受信側機器と1対1で通信していた時より送信完了までの時間が長くなります。したがって①と②では、①の送信時間が短くなります。

b=ア:①の方が短い

設問2

次の記述中の に入れる適切な答えを,解答群の中から選べ。ここで,c1とc2に入れる答えは,cに関する解答群の中から組合せとして適切なものを選ぶものとする。

 無線LANの物理層の通信速度は,機器間の距離や障害物の有無などによって変化する。機器Bを機器Cから離すことによって,機器Bと機器Cの間の物理層の通信速度が24Mビット/秒になった。機器Aと機器Cの間の物理層の通信速度は54Mビット/秒のままである。機器Aと機器Bのそれぞれが,機器Cに対して,それぞれ1Mバイトのデータの送信処理を同時に開始した。このとき,機器Bと機器Cの間の物理層の通信速度が54Mビット/秒から24Mビット/秒になったことによって,c1。したがって,機器Aから機器Cへのデータ送信速度は,機器Bと機器Cの間の物理層の通信速度が54Mビット/秒だったときと比較して,c2
c に関する解答群
pm04_2.png/image-size:491×223

解答選択欄

  • c:

解答

  • c=

解説

c1について〕
設問に示されているデータフレームとACKフレームの送信時間は、物理層の通信速度が54Mビット/秒の時の値です。機器Bと機器Cの間の物理層の速度が低下すると、両機器間でやり取りされるデータフレームおよびACKフレームの送信時間は必然的に長くなります。
  • 正しい。機器B~機器Cのフレーム送信時間の増加に伴い、機器Aが自身のフレーム送信に先立ち機器Bのフレーム送信を検出した際の、フレーム送信完了を待つ平均時間は増加します。
  • 誤り。W1待機は、他の機器がフレームを送信していないことを確認した後に行われます。つまりW1待機の回数はデータフレームの送出数と同数になります。W1待機中に他の端末からのフレーム送信を検出した場合にはW1待機が再度生じますが、データフレームの個数は機器A,Bともに以前と変わらないため、これが生じる確率も以前と変わらないはずです。したがって機器AのW1待機の回数は以前と同じになります。
  • 誤り。無線LANにおける物理層の通信速度とは、電波に情報を乗せて空間を運ぶ速度です。設問には「無線LANの物理層の通信速度は,機器間の距離や障害物の有無などによって変化する」とあり、機器B~機器Cの物理層の通信速度の低下は、機器A~機器Cの物理層の通信速度への影響要因ではないとわかります。
  • 正しい。「ウ」と同じ理由で機器A~機器Cの物理層の通信速度への影響はありません。
  • 誤り。W1の平均は物理層の通信速度によらず一定です。
  • 正しい。最大フレーム長が固定値であるため、伝送速度が変化してもやり取りされるフレームの個数は変わりません。したがって送信データ量も変わりません。
c2について〕
機器Aでは、機器Bによるフレーム送信完了までの時間が増加するためデータ通信速度は以前より低下します。したがって「ア」「イ」が適切です。

c1c2の両方が正しい組合せは「ア」のみです。

設問3

無線LANにおける,データ送信速度を向上させる工夫を三つ,次に示す。これらのうち,伝送効率(データ送信速度÷物理層の通信速度)の向上に寄与するものだけを全て挙げたものとして適切な答えを,解答群の中から選べ。

〔データ送信速度を向上させる工夫〕
  1. 複数のデータフレームに対応する一つのACKを返すことによって,ACKフレームの個数を削減する。
  2. 複数のデータフレームをまとめて送信することによって,W1だけ待機する回数を削減する。
  3. 物理層の通信速度を向上させる。
解答群
  • (Ⅰ)
  • (Ⅰ),(Ⅱ)
  • (Ⅰ),(Ⅲ)
  • (Ⅱ)
  • (Ⅱ),(Ⅲ)
  • (Ⅲ)

解答選択欄

  •  

解答

  •  

解説

  1. 正しい。ACKフレーム送信およびW2待機の回数が少なくなるため単位時間当たりのデータ送信量が増えます。これにより伝送効率は向上します。
  2. 正しい。W1待機の回数が少なくなれば単位時間当たりのデータ送信量が増えます。これにより伝送効率は向上します。
  3. 誤り。物理層の通信速度が向上すると、伝送効率を求める式の分母が大きくなるため伝送効率は低下します。
正しい記述は「Ⅰ,Ⅱ」なので、「イ」が正解です。(Ⅰ)と(Ⅱ)を組み合わせた技術はフレームアグリゲーションと呼ばれ、無線LANの高速化のためにIEEE 802.11nから採用されています。

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