基本情報技術者過去問題 平成22年春期 午後問6

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問6 プロジェクトマネジメント

プロジェクトにおける品質管理に関する次の記述を読んで,設問1,2に答えよ。

 システムインテグレータX社は,Y社のシステム開発を3年前から担当している。初年度の新規開発が終了後,半年ごとにシステムの機能拡張を継続的に行っている。今年度は比較的大規模なシステム開発(以下,プロジェクトPという)をすることになり,表1のとおりに開発体制を変更(新規メンバーを,グループG1に1名,G2に2名追加)した。プロジェクトPでは,開発体制の変更に伴うシステムの品質低下を防止するために,従来以上にプロジェクトにおける品質管理を徹底することにした。
 過去のプロジェクトで蓄積された品質データ(バグ件数,バグ摘出率など)は,次のプロジェクトの品質管理に役立てることができる。蓄積された品質データを基に,新規プロジェクトの目標値を設定し,各開発工程での実績値との差異を分析する。差異が生じた場合には,その原因を見いだして,品質向上のための施策の実行,目標値の見直しなど,適切に対処することを繰り返す。これによって,開発工程が進むにつれて品質管理の精度が向上し,システムの品質が確保される。
  • プロジェクトPの開発工程は,設計工程,製造工程,単体テスト工程及び結合テスト工程の四つの工程から成る。
  • 設計工程の開始時点では,Y社のシステム開発における過去のプロジェクトでの品質データの実績値を基に,バグ総件数を予測し,工程ごとのバグ摘出率の目標値を設定する。設計工程の終了時には,バグ摘出件数の予測値と実績値の比較・分析を行い,バグ総件数の予測値を見直して,以降の工程での残存バグ件数を予測する。製造工程,単体テスト工程及び結合テスト工程の終了時に,この予測を繰り返す。
  • 設計工程又は製造工程で生じた誤り(バグ)をテスト工程で発見して修正する場合には多くの工数を要するので,開発の生産性及びシステムの品質向上には,バグの早期発見が重要である。
     X社では,設計工程及び製造工程でのバグ摘出率の向上を目指し,品質管理の全社目標を,"設計工程及び製造工程でのバグ摘出率65%以上"に設定している。各グループのこれまでの品質データに今回の開発体制の変更の影響を加味した結果と全社目標を基に,プロジェクトPの設計工程開始時点での工程ごとの目標バグ摘出率を表2のように設定した。
  • 各サブシステムとも,設計工程は計画どおりの期間で終了した。設計工程でのバグ摘出件数の実績値及び算出したバグ摘出率は,表3のとおりであった。
    設計工程でのバグ摘出率(%)は,次の式で算出する。
  • 製造工程でのバグ摘出件数の実績値は,表4のとおりであった。バグ摘出件数の予測値と実績値を比較・分析した結果,製造工程の終了時に各サブシステムでの残存バグ件数を表4のとおりに予測した。
  • テスト工程(単体テスト工程及び結合テスト工程)でのバグ摘出件数の実績値は,表5のとおりであった。

設問1

次の記述中の に入れる適切な答えを,解答群の中から選べ。

 プロジェクトマネージャのM課長は,表3の結果を見て,グループG1とG2の設計品質に対して表6に示す疑問をもち,グループリーダーに各サブシステムの設計品質についての見解を説明させた。グループリーダーからの回答内容は,表7のとおりであった。M課長は,この説明に納得して,各グループに製造工程への着手を指示した。
pm06_7.png/image-size:485×451
a,b,c,d に関する解答群
  • 過去のシステムの機能拡張で改造した機能と類似しているモジュールが予想以上に多かったこと
  • 新規メンバーが要求仕様を完全に理解していなかったためにバグが発生したこと
  • 新規メンバーの1人が,類似システムの開発に関して,既存メンバーを上回る経験を有していたこと
  • 設計の難度が高いモジュールが予測以上に多かったこと
  • 他システムの保守対応など緊急の割込み業務が多発して工数不足だったこと

解答選択欄

  • a:
  • b:
  • c:
  • d:

解答

  • a=
  • b=
  • c=
  • d=
※aとbは順不同

解説

abについて〕
G1では、設計工程でのバグ摘出率が目標の30%よりも高くなっています。バグの摘出率が高いということは、設計の品質が悪くバグが予定よりも多く含まれていることが考えられます。

選択肢の中からバグが多くなる要因二つを探すと、
  • 過去のシステムで類似したモジュールの開発実績があれば、経験がある分含まれるバグは少なくなると考えられます。
  • 正しい。バグの含まれる量が多くなる要因となります。
  • 新規メンバーには通常、既存メンバー以下の作業効率を見込みます。しかし新規メンバーが類似システムの開発に長じていた場合、グループ全体の品質向上が見込め、その結果バグが含まれる量は少なくなると考えられます。
  • 正しい。バグの含まれる量が多くなる要因となります。
  • プロジェクトPの開始に当たって、作業の増大を見込んで人員を追加しているので直接の要因とは言えません。
a(bと順不同)
 b(aと順不同)

cについて〕
表7「M課長の疑問点に対する回答」中のG2の回答「cによって、設計の再利用率が計画値よりも高まった」より cには、設計の再利用率が高まるような要因が入ることになります。

選択肢の中で適切な語句は「ア」です。
過去のシステムで類似したモジュールの開発実績があれば、以前のソースコードの中で同じ機能を目的とするものを積極的に再利用することで開発効率の向上が見込めるからです。

c

dについて〕
G2の回答「dによって、メンバーの生産性が計画値よりも高まった」より dには、メンバーの生産性が高まるような要因が入ることになります。

選択肢の中で適切な語は「ウ」です。
新規メンバーには通常、既存メンバー以下の作業効率を見込みます。しかし新規メンバーが類似システムの開発に長じていた場合、経験を生かし通常よりも開発をスムーズに進めることができ、結果として生産性の向上が見込めるからです。

d

設問2

テスト工程での品質に関する次の記述中の に入れる適切な答えを,解答群の中から選べ。
 なお,解答群の数値は小数点以下を四捨五入した値である。

 表4及び表5の結果を見たM課長は,S2に関して,製造工程終了時の残存バグ件数の予測値が170件であるのに対し,テスト工程でのバグ摘出件数は160件であり,10件の摘出不足があることから,まだバグが残っており,テスト不足ではないのかとの疑問をもった。
 そこで,S2に対して追加テストが必要かどうかを見極めるために,テスト工程でのバグ成長曲線を確認することにした。テスト工程における検査項目の完了数とバグ摘出件数との関係を表すグラフがeであることから,S2のテスト工程での品質は十分に安定していると評価した。また,S2の設計工程においても,表7の回答内容から品質の良さが想定される。さらに,最終的な製造工程のバグ摘出率はf%であり,製造工程での品質確保も十分であると考えられる。最終的な製造工程のバグ摘出率(%)は,次の式で算出する。
pm06_8.png/image-size:425×39
 これらのことから,S2のバグ総件数の実績値は当初の予測値よりも少ない値であるが,バグは残っていないと判断してテストを完了した。
 その後,Y社へシステムをリリースして3か月が経過したが,Y社からの不具合の報告はなかった。この結果から,最終的に設計工程及び製造工程でのバグ摘出率の合算値が最も高かったのは,グループgであり,バグ摘出率の合算値は h%である。
e に関する解答群
  • pm06_9a.png/image-size:381×170
  • pm06_9i.png/image-size:381×169
  • pm06_9u.png/image-size:380×168
f に関する解答群
  • 30
  • 32
  • 34
  • 36
  • 38
g に関する解答群
  • G1
  • G2
  • G3
h に関する解答群
  • 66
  • 68
  • 70
  • 72
  • 74

解答選択欄

  • e:
  • f:
  • g:
  • h:

解答

  • e=
  • f=
  • g=
  • h=

解説

eについて〕
S2では製造工程終了時の残存バグ件数170件に対して、テスト工程で検出されたバグは160件と予定に満たない件数でした。

3つのバグ成長度曲線の中で、バグ検出件数が上辺である残存バグ件数の予測値に達していないグラフは「イ」だけであり、このグラフがS2のテスト工程進行とバグ検出件数の関係を表したグラフであると判断できます。
pm06_10.png/image-size:381×169
ちなみに「イ」のグラフであることから、テスト工程での品質が十分に安定していると判断された理由は、このグラフの形状が信頼度曲線(=ゴンペルツ曲線)に近いからです。
信頼度曲線は、
  • テスト開始直後はバグの発生数は少ない
  • 時間経過とともに徐々に増加していく
  • 最終的にある一定のバグ数に収束する
という3つの特徴を持っており、テスト終盤になりグラフの接線の傾きが0に近づいた時に一定の品質に達したことが経験的に判断されます。

e

fについて〕
まず各工程におけるバグ検出件数の実績値を集計したものが下表です。
pm06_11.png/image-size:311×136
最終的な製造工程のバグ摘出率(%)は、以下の式で求められるので、表の数値を当てはめてG2の製図工程のバグ摘出率を計算します。
pm06_8.png/image-size:425×39
 170÷505=0.3300…≒34%

fウ:34

ghについて〕
上表を参考にして3つのグル―プの設計・製造工程でのバグ摘出率の合算値を計算してみます。計算に用いる式は、
 (設計工程のバグ検出件数+製造工程のバグ検出件数)/全工程でのバグ総件数
です。
  • G1=(280+210)/750=0.6533…≒65%
  • G2=(175+170)/505=0.6831…≒68%
  • G3=(112+143)/390=0.6538…≒65%
したがって設計・製造工程でのバグ摘出率の合算値が最も高かったグループは、G2で摘出率は約68%とわかります。

gイ:G2
 hイ:68

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