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基本情報技術者過去問題 平成30年春期 午後問6
⇄問題文と設問を画面2分割で開く⇱問題PDF問6 プロジェクトマネジメント
EVM(Earned Value Management)手法を用いたプロジェクト管理に関する次の記述を読んで,設問1~3に答えよ。
S社では,クライアントサーバシステムとして構築されている既存の営業システムを,Webシステムに刷新するプロジェクト(以下,刷新プロジェクトという)を立ち上げた。Webシステムとして構築する営業システムを,新営業システムと呼ぶ。
N社は,この刷新プロジェクトにおける外部設計から結合テストまでを受注した。
〔刷新プロジェクトへのN社の対応〕
S社では,クライアントサーバシステムとして構築されている既存の営業システムを,Webシステムに刷新するプロジェクト(以下,刷新プロジェクトという)を立ち上げた。Webシステムとして構築する営業システムを,新営業システムと呼ぶ。
N社は,この刷新プロジェクトにおける外部設計から結合テストまでを受注した。
〔刷新プロジェクトへのN社の対応〕
- S社から提示された刷新プロジェクトの結合テストまでのスケジュールは,図1のとおりである。
- 新営業システムは,サブシステムS1(以下,S1という),サブシステムS2(以下,S2という)及び共通機能の三つのサブシステムで構成される。N社はこの構成に合わせて外部設計から結合テストまでを実施するプロジェクト(以下,プロジェクトという)体制を構築し,プロジェクトマネージャは,システム企画部に所属するY君が担当する。
- N社では,新営業システムと類似するWebシステムの開発をこれまで複数案件行っており,組織のプロセス資産として各開発工程の生産性のデータを保有している。N社が保有する各開発工程の生産性を,表1に示す。Y君は,要件定義の成果物である要件定義書とN社の過去の開発実績を参考にして,表2に示すとおりに新営業システムの開発規模を見積もった。ここで,KLOC(Kilo Lines Of Code)は,ソースコード1,000行を単位とする指標である。
設問1
外部設計と内部設計のサブシステムごとの計画工数を,表3に示す。表3中の に入れる正しい答えを,解答群の中から選べ。
a に関する解答群
- 25.75
- 30.00
- 31.25
- 37.50
解答選択欄
- a:
解答
- a=ウ
解説
〔aについて〕
開発規模と生産性及び工数の間には以下の関係があります。
工数=開発規模÷生産性
aには、S1の内部設計の工数が入ります。S1の開発規模は200.00(以下、単位省略)、内部設計の生産性は6.40なので、S1の内部設計の工数(人月)は、
200.00÷6.40=31.25(人月)
したがって「ウ」が正解です。
∴a=ウ:31.25
開発規模と生産性及び工数の間には以下の関係があります。
工数=開発規模÷生産性
aには、S1の内部設計の工数が入ります。S1の開発規模は200.00(以下、単位省略)、内部設計の生産性は6.40なので、S1の内部設計の工数(人月)は、
200.00÷6.40=31.25(人月)
したがって「ウ」が正解です。
∴a=ウ:31.25
設問2
次の記述中の に入れる正しい答えを,解答群の中から選べ。
N社では,進捗遅延やコスト超過を早期に検出することを目的として,EVM手法を用いたプロジェクト管理を行っている。EVM手法では,プロジェクトの計画と実績について,定量的な情報を用いて進捗状況やコスト状況を分析し,評価する。EVM手法で使う各指標(以下,EVM指標という)のN社での意味を,表4に示す。 外部設計を開始してから35作業日(1.75か月)が経過した時点での,外部設計工程のサブシステムごとのEVM指標値を,表5に示す。ここで,表5のEVM指標値は,小数点第3位を四捨五入した値である。 次の(1)~(6)の記述のうち,表5のEVM指標値から予測した,外部設計が終了する時点での見通しとして適切な組合せは, である。ここで,予測に当たってSPI及びCPIは,表5の実績と同等であるものとする。
N社では,進捗遅延やコスト超過を早期に検出することを目的として,EVM手法を用いたプロジェクト管理を行っている。EVM手法では,プロジェクトの計画と実績について,定量的な情報を用いて進捗状況やコスト状況を分析し,評価する。EVM手法で使う各指標(以下,EVM指標という)のN社での意味を,表4に示す。 外部設計を開始してから35作業日(1.75か月)が経過した時点での,外部設計工程のサブシステムごとのEVM指標値を,表5に示す。ここで,表5のEVM指標値は,小数点第3位を四捨五入した値である。 次の(1)~(6)の記述のうち,表5のEVM指標値から予測した,外部設計が終了する時点での見通しとして適切な組合せは, である。ここで,予測に当たってSPI及びCPIは,表5の実績と同等であるものとする。
- S1については,ACが外部設計終了時点のPVを超過しない。また,外部設計はスケジュール遅延せずに完了する。
- S1については,ACが外部設計終了時点のPVを超過する。また,外部設計はスケジュール遅延せずに完了する。
- S2については,外部設計はスケジュール遅延する。
- S2については,ACが外部設計終了時点のPVを超過する。また,外部設計はスケジュール遅延せずに完了する。
- 共通機能については,外部設計はスケジュール遅延する。
- 共通機能については,ACが外部設計終了時点のPVを超過しない。また,外部設計はスケジュール遅延せずに完了する。
解答群
- (1)と(4)
- (1)と(5)
- (2)と(3)
- (2)と(4)
- (3)と(5)
- (3)と(6)
- (4)と(5)
- (4)と(6)
解答選択欄
解答
- ク
解説
EVM(Earned Value Management)は、プロジェクトにおける作業を金銭の価値に置き換えて定量的に実績管理をする進捗管理手法です。
EVMではPV,EV,ACの3つの指標を用いてプロジェクトの進捗を管理するのが特徴です。各指標を比較して、「EV-AC(=CV:コスト差異)」がマイナス値であれば完了済み作業に対する予算よりも投入コストが多いのでコスト超過、「EV-PV(=SV:スケジュール差異)」がマイナス値であれば完了済み作業に対する予算が当初の予算よりも少ないので進捗遅れ、と判断することができます。
まず、サブシステムごとのスケジュール差異(SV)とコスト差異(CV)を明確にします。
∴ク:(4)と(6)
EVMではPV,EV,ACの3つの指標を用いてプロジェクトの進捗を管理するのが特徴です。各指標を比較して、「EV-AC(=CV:コスト差異)」がマイナス値であれば完了済み作業に対する予算よりも投入コストが多いのでコスト超過、「EV-PV(=SV:スケジュール差異)」がマイナス値であれば完了済み作業に対する予算が当初の予算よりも少ないので進捗遅れ、と判断することができます。
まず、サブシステムごとのスケジュール差異(SV)とコスト差異(CV)を明確にします。
- S1
- スケジュール差異(SV)=21.15-21.88=▲0.73
コスト差異(CV)=21.15-21.60=▲0.45
S1は、「進捗遅れ」で「コスト超過」の状態にあると判断できます。 - S2
- スケジュール差異(SV)=26.25-26.25=0
コスト差異(CV)=26.25-26.55=▲0.30
S2は、「スケジュール通り」で「コスト超過」の状態にあると判断できます。 - 共通機能
- スケジュール差異(SV)=8.75-8.75=0
コスト差異(CV)=8.75-8.10=0.65
共通機能は、「スケジュール通り」で「コストが予算内」の状態にあると判断できます。
- 誤り。S1は、SV、CVともにマイナス値なので、このままの効率性が続くと外部設計の完了が遅延し、かつ、予算オーバになります。
- 誤り。S1のSVはマイナス値なので、このままの効率性が続くと外部設計の完了が遅延します。
- 誤り。S2のSVは±0なので、順調に進めば作業はスケジュール通りに完了します。
- 正しい。S2のSVは±0なので、順調に進めば作業はスケジュール通りに完了します。またCVはマイナス値なので、これまでのコスト効率が続けば予算オーバになります。
- 誤り。共通機能のSVは±0なので、順調に進めば作業はスケジュール通りに完了します。
- 正しい。共通機能のSVは±0なので、順調に進めば作業はスケジュール通りに完了します。またCVはプラス値なので、これまでのコスト効率が続けばコストは予算内に収まります。
∴ク:(4)と(6)
設問3
次の記述中の に入れる正しい答えを,解答群の中から選べ。ここで,e1~e3に入れる答えは,eに関する解答群の中から組合せとして正しいものを選ぶものとする。
図2は,外部設計を開始した時点から,結合テストを開始して1か月が経過した時点までの,各経過月末時点のEVM指標値をグラフにしたものである。Y君は,このグラフを用いてプロジェクトの現状分析を行うことにした。 結合テスト開始後,bであることがグラフから読み取れる。また,αはcを表し,βはdを表している。
次に,未完了である残作業の作業工数(以下,残作業工数という)を式"e1-e2"で求めた。この残作業工数は,プロジェクト計画時点の見積りに基づいているが,今後の作業は計画どおり進捗するものとして,この残作業工数にe3を加算し,プロジェクトの全ての作業が完了したときの総工数の予測値を見直した。
図2は,外部設計を開始した時点から,結合テストを開始して1か月が経過した時点までの,各経過月末時点のEVM指標値をグラフにしたものである。Y君は,このグラフを用いてプロジェクトの現状分析を行うことにした。 結合テスト開始後,bであることがグラフから読み取れる。また,αはcを表し,βはdを表している。
次に,未完了である残作業の作業工数(以下,残作業工数という)を式"e1-e2"で求めた。この残作業工数は,プロジェクト計画時点の見積りに基づいているが,今後の作業は計画どおり進捗するものとして,この残作業工数にe3を加算し,プロジェクトの全ての作業が完了したときの総工数の予測値を見直した。
b に関する解答群
- 進捗状況とコスト状況のどちらも悪化傾向
- 進捗状況とコスト状況のどちらも改善傾向
- 進捗状況は改善傾向,コスト状況は悪化傾向
- 進捗状況は悪化傾向,コスト状況は改善傾向
c,d に関する解答群
- BAC(完了までの総予算)
- PV(出来高計画値)
- EV(出来高実績値)
- AC(コスト実績値)
- SV(スケジュール差異)
- CV(コスト差異)
e に関する解答群
解答選択欄
- b:
- c:
- d:
- e:
解答
- b=ア
- c=カ
- d=オ
- e=イ
解説
〔bについて〕
グラフを見ると、結合テストの開始時点ではEV、PV、ACが同値(すなわちSVとCVが±0)となっていますが、結合テストの開始後には、PVとACがともにEVを上回っていることを読み取れます。この状態でスケジュール差異(SV)及びコスト差異(CV)を計算すると、ともにマイナス値になるので「進捗状況とコスト状況のどちらも悪化している」と判断されます。
∴b=ア:進捗状況とコスト状況のどちらも悪化している
〔cについて〕
αはEVとACの差ですからCV(コスト差異)が適切です。
∴c=カ:CV(コスト差異)
〔dについて〕
βはEVとPVの差ですからSV(スケジュール差異)が適切です。
∴d=オ:SV(スケジュール差異)
〔eについて〕
EVMにおいて、プロジェクトのある時点における残作業工数(プロジェクト開始時の予定値)は、BAC(完了までの総予算)からEV(出来高実績値)を差し引くことで求められます。EVMのグラフで示せば下図のγの部分がそれに相当します。この残作業工数にAC(コスト実績値)を足すことで完成時の総コスト見積りが求められます。したがってe1=BAC、e2=EV、e3=AC の組合せが適切です。
∴e=イ
グラフを見ると、結合テストの開始時点ではEV、PV、ACが同値(すなわちSVとCVが±0)となっていますが、結合テストの開始後には、PVとACがともにEVを上回っていることを読み取れます。この状態でスケジュール差異(SV)及びコスト差異(CV)を計算すると、ともにマイナス値になるので「進捗状況とコスト状況のどちらも悪化している」と判断されます。
∴b=ア:進捗状況とコスト状況のどちらも悪化している
〔cについて〕
αはEVとACの差ですからCV(コスト差異)が適切です。
∴c=カ:CV(コスト差異)
〔dについて〕
βはEVとPVの差ですからSV(スケジュール差異)が適切です。
∴d=オ:SV(スケジュール差異)
〔eについて〕
EVMにおいて、プロジェクトのある時点における残作業工数(プロジェクト開始時の予定値)は、BAC(完了までの総予算)からEV(出来高実績値)を差し引くことで求められます。EVMのグラフで示せば下図のγの部分がそれに相当します。この残作業工数にAC(コスト実績値)を足すことで完成時の総コスト見積りが求められます。したがってe1=BAC、e2=EV、e3=AC の組合せが適切です。
∴e=イ