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基本情報技術者過去問題 平成31年春期 午後問4
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eラーニングシステムの構成変更に関する次の記述を読んで,設問1~3に答えよ。
G社は,全国に設置した様々な規模の教室から教育コンテンツにアクセスできるWebベースのeラーニングシステムを構築し,このシステムを使った教育事業を展開している。
eラーニングシステムは,1台のコンテンツサーバと1台のアプリケーションサーバで構成されている。コンテンツサーバは,教材や試験問題などの教育コンテンツを保持し,アプリケーションサーバを経由して,クライアントである教室のPCに教育コンテンツを送信する。
アプリケーションサーバは,受講者の認証を行い,ログインしている受講者を管理する。
受講者は,クライアントを利用して,教室ごとに設置されているプロキシサーバとインターネットを経由して,eラーニングシステムにアクセスして学習する。
最近,一部の受講者から,システム利用に関して,"応答に時間が掛かる"などの苦情が寄せられている。G社では,応答時間を短縮するために,アプリケーションサーバ1台の追加と負荷分散装置の導入を伴う新しいネットワーク構成を検討した。負荷分散装置は,クライアントからの要求を,同じ機能をもつ複数のサーバのうちのいずれかに振り分ける装置である。
〔検討したネットワーク構成〕
検討したネットワーク構成を,図1に示す。 クライアントからプロキシサーバを経由して,eラーニングシステムにアクセスするために,DNSサーバ及び負荷分散装置には次の設定を行う。
〔負荷分散装置を用いたアクセスの振り分け〕
アプリケーションサーバは,ログインしている受講者を管理し,その受講者がどの教育コンテンツを閲覧中かなどの状況を保持する。したがって,負荷分散装置を用いてアプリケーションサーバの負荷分散を行う場合には,受講者がeラーニングシステムにログインしてからログアウトするまでは,その受講者が利用する1台のクライアントからアプリケーションサーバへの要求を,常に同一のアプリケーションサーバへ振り分ける必要がある。負荷分散装置には,送信元のIPアドレスの情報を基に要求を振り分けるタイプ(以下,装置タイプAという)と,OSI基本参照モデルのレイヤ4以上の情報を基に要求を振り分けるタイプ(以下,装置タイプBという)とがある。二つのタイプそれぞれの装置の動作について,概要を次に示す。
(1) 装置タイプA
(2) 装置タイプB
検討の結果,アプリケーションサーバの負荷に偏りが少なくなることから,装置タイプBを導入することにした。
G社は,全国に設置した様々な規模の教室から教育コンテンツにアクセスできるWebベースのeラーニングシステムを構築し,このシステムを使った教育事業を展開している。
eラーニングシステムは,1台のコンテンツサーバと1台のアプリケーションサーバで構成されている。コンテンツサーバは,教材や試験問題などの教育コンテンツを保持し,アプリケーションサーバを経由して,クライアントである教室のPCに教育コンテンツを送信する。
アプリケーションサーバは,受講者の認証を行い,ログインしている受講者を管理する。
受講者は,クライアントを利用して,教室ごとに設置されているプロキシサーバとインターネットを経由して,eラーニングシステムにアクセスして学習する。
最近,一部の受講者から,システム利用に関して,"応答に時間が掛かる"などの苦情が寄せられている。G社では,応答時間を短縮するために,アプリケーションサーバ1台の追加と負荷分散装置の導入を伴う新しいネットワーク構成を検討した。負荷分散装置は,クライアントからの要求を,同じ機能をもつ複数のサーバのうちのいずれかに振り分ける装置である。
〔検討したネットワーク構成〕
検討したネットワーク構成を,図1に示す。 クライアントからプロキシサーバを経由して,eラーニングシステムにアクセスするために,DNSサーバ及び負荷分散装置には次の設定を行う。
- DNSサーバに,eラーニングシステムのドメイン名とこれに対応するIPアドレスとしてaとを登録する。
- 負荷分散装置に,振り分け先IPアドレスとしてbとを登録する。
〔負荷分散装置を用いたアクセスの振り分け〕
アプリケーションサーバは,ログインしている受講者を管理し,その受講者がどの教育コンテンツを閲覧中かなどの状況を保持する。したがって,負荷分散装置を用いてアプリケーションサーバの負荷分散を行う場合には,受講者がeラーニングシステムにログインしてからログアウトするまでは,その受講者が利用する1台のクライアントからアプリケーションサーバへの要求を,常に同一のアプリケーションサーバへ振り分ける必要がある。負荷分散装置には,送信元のIPアドレスの情報を基に要求を振り分けるタイプ(以下,装置タイプAという)と,OSI基本参照モデルのレイヤ4以上の情報を基に要求を振り分けるタイプ(以下,装置タイプBという)とがある。二つのタイプそれぞれの装置の動作について,概要を次に示す。
(1) 装置タイプA
- 振り分け先が決まっていない送信元IPアドレスからの要求は,ラウンドロビン方式で決定したアプリケーションサーバに振り分けるとともに,送信元IPアドレスと振り分け先のアプリケーションサーバのIPアドレスとを記録する。
- 振り分け先が決まっている送信元IPアドレスからの要求は,そのアプリケーションサーバに娠リ分ける。
(2) 装置タイプB
- クライアントから送信された要求中のHTTPヘッダー内にc(以下,識別情報という)がない場合は,ラウンドロビン方式で決定したアプリケーションサーバに振り分ける。
- アプリケーションサーバから送信された応答に含まれるHTTPヘッダー内の識別情報と,当該アプリケーションサーバのIPアドレスとを記録する。
- クライアントから送信された要求中のHTTPヘッダー内の識別情報に対応するアプリケーションサーバのIPアドレスが(b)の処理によって記録されている場合は,そのアプリケーションサーバに振り分ける。
検討の結果,アプリケーションサーバの負荷に偏りが少なくなることから,装置タイプBを導入することにした。
設問1
本文中の に入れる適切な答えを,解答群の中から選べ。
a に関する解答群
- 192.0.2.1
- 192.0.2.2
- 192.168.0.1
- 192.168.0.2
- 192.168.0.3
- 198.51.100.1
b に関する解答群
- 192.168.0.1と192.168.0.2
- 192.168.0.1と192.168.0.3
- 192.168.0.2と192.168.0.3
- 192.168.0.2と192.168.0.254
c に関する解答群
- DNSサーバのIPアドレス
- アプリケーションサーバとコンテンツサーバのポート番号
- セッションIDを示すcookie
- 負荷分散装置のIPアドレス
解答選択欄
- a:
- b:
- c:
解答
- a=イ
- b=ア
- c=ウ
解説
〔aについて〕
負荷分散装置導入後の構成では、クライアントからの要求を負荷分散装置が受け取り、各種情報を基に適切なアプリケーションサーバに要求を振り分けることになります。
eラーニングシステムはWebベースのシステムなので、クライアントはWebブラウザ上でドメイン名を指定してeラーニングシステムにアクセスします。この際にドメイン名の名前解決が行われるのですが、DNSサーバが返すIPアドレスによってクライアントがアクセスする機器が変わります。クライアントからの全ての要求を負荷分散装置に集めたいのですから、ドメイン名に対応するIPアドレスとして負荷分散装置のIPアドレスを設定しなければなりません。
負荷分散装置のIPアドレスには、インターネット側(グローバルIPアドレス)の「192.0.2.2」と内部ネットワーク向け(プライベートIPアドレス)の「192.168.0.254」がありますが、クライアントはインターネットを介して負荷分散装置にアクセスするので、DNSサーバにはグローバルIPアドレスである「192.0.2.2」を登録します。
∴a=イ:192.0.2.2
〔bについて〕
本文中の説明にもあるように、負荷分散装置は、クライアントからの要求を、同じ機能をもつ複数のサーバのうちいずれかに振り分ける装置です。eラーニングシステムの構成上、同じ機能のサーバはアプリケーションサーバの組みだけであり、〔負荷分散装置を用いたアクセスの振り分け〕ではアプリケーションサーバ2台への振り分け方式が説明されているため、振り分け先は2台のアプリケーションサーバになるとわかります。アプリケーションサーバのIPアドレスは「192.168.0.1」と「192.168.0.2」なので、この2つを振り分け先IPアドレスとして登録することになります。
∴b=ア:192.168.0.1と192.168.0.2
〔cについて〕
装置タイプBでは、HTTPヘッダー内の情報を基に振り分けるので選択肢のうちHTTPヘッダーに含まれる情報が正解となります。
cookieは、HTTPのレスポンスヘッダー内の指示によってWebブラウザにユーザ情報などを保存し、HTTPのリクエストヘッダーを通じてその情報をWebサーバに送信する仕組みです。セッションIDとは、サーバ側でユーザを識別するためにWebブラウザに埋め込まれるキー情報であり、通常はcookieの仕組みを用いてWebブラウザにセッションIDを埋め込みます。したがって、装置タイプBが識別情報として利用するのは「セッションIDを示すcookie」になります。
負荷分散装置導入後の構成では、クライアントからの要求を負荷分散装置が受け取り、各種情報を基に適切なアプリケーションサーバに要求を振り分けることになります。
eラーニングシステムはWebベースのシステムなので、クライアントはWebブラウザ上でドメイン名を指定してeラーニングシステムにアクセスします。この際にドメイン名の名前解決が行われるのですが、DNSサーバが返すIPアドレスによってクライアントがアクセスする機器が変わります。クライアントからの全ての要求を負荷分散装置に集めたいのですから、ドメイン名に対応するIPアドレスとして負荷分散装置のIPアドレスを設定しなければなりません。
負荷分散装置のIPアドレスには、インターネット側(グローバルIPアドレス)の「192.0.2.2」と内部ネットワーク向け(プライベートIPアドレス)の「192.168.0.254」がありますが、クライアントはインターネットを介して負荷分散装置にアクセスするので、DNSサーバにはグローバルIPアドレスである「192.0.2.2」を登録します。
∴a=イ:192.0.2.2
〔bについて〕
本文中の説明にもあるように、負荷分散装置は、クライアントからの要求を、同じ機能をもつ複数のサーバのうちいずれかに振り分ける装置です。eラーニングシステムの構成上、同じ機能のサーバはアプリケーションサーバの組みだけであり、〔負荷分散装置を用いたアクセスの振り分け〕ではアプリケーションサーバ2台への振り分け方式が説明されているため、振り分け先は2台のアプリケーションサーバになるとわかります。アプリケーションサーバのIPアドレスは「192.168.0.1」と「192.168.0.2」なので、この2つを振り分け先IPアドレスとして登録することになります。
∴b=ア:192.168.0.1と192.168.0.2
〔cについて〕
装置タイプBでは、HTTPヘッダー内の情報を基に振り分けるので選択肢のうちHTTPヘッダーに含まれる情報が正解となります。
cookieは、HTTPのレスポンスヘッダー内の指示によってWebブラウザにユーザ情報などを保存し、HTTPのリクエストヘッダーを通じてその情報をWebサーバに送信する仕組みです。セッションIDとは、サーバ側でユーザを識別するためにWebブラウザに埋め込まれるキー情報であり、通常はcookieの仕組みを用いてWebブラウザにセッションIDを埋め込みます。したがって、装置タイプBが識別情報として利用するのは「セッションIDを示すcookie」になります。
- DNSサーバのIPアドレスは要求中に含まれません。
- ポート番号はTCPヘッダーに含まれる情報です。
- 正しい。cookieはHTTPヘッダーに含まれる情報です。
- 宛先IPアドレスはIPヘッダーに含まれる情報です。
設問2
本文中の下線部①で,装置タイプAを用いたときに,アプリケーションサーバの負荷に偏りが生じる要因となり得るものはどれか。適切な答えを,解答群の中から選べ。
解答群
- 同じ教室のどのクライアントからの要求も送信元IPアドレスが全て同じになること。
- クライアントから送られてきたIPパケット内の送信先アドレスが変換されること。
- 負荷分散装置が送信元IPアドレスの情報を用いるだけの単純な機能なので,高速に動作すること。
- プロキシサーバを経由しても,HTTPヘッダーの情報が変更されないこと。
解答選択欄
解答
- ア
解説
装置タイプAは送信元IPアドレスを基に振り分ける方式です。教室からeラーニングシステムへのアクセスには、教室ごとに設置されたプロキシサーバを利用するため、負荷分散装置に届いたパケットの送信元IPアドレスは、各教室のプロキシサーバのIPアドレスになっています。このため、同一教室内のクライアントは全て同一のアプリケーションサーバに振り分けられることになります。
装置タイプAで採用されているラウンドロビン方式は、2つのアプリケーションサーバの負荷状態や接続数に関係なく、単純に2台の装置に順番に振り分けていく方式なので、以下の例のようにアクセスが一方のサーバに偏る可能性があります。
∴ア:同じ教室のどのクライアントからの要求も送信元IPアドレスが全て同じになること
装置タイプAで採用されているラウンドロビン方式は、2つのアプリケーションサーバの負荷状態や接続数に関係なく、単純に2台の装置に順番に振り分けていく方式なので、以下の例のようにアクセスが一方のサーバに偏る可能性があります。
- 教室A(20台)をサーバ1に振り分ける
- 教室B(100台)をサーバ2に振り分ける
- 教室C(10台)をサーバ1に振り分ける
- 教室D(200台)をサーバ2に振り分ける
- 各サーバの最大接続数は、サーバ1が30台、サーバ2が300台
∴ア:同じ教室のどのクライアントからの要求も送信元IPアドレスが全て同じになること
設問3
次の記述中の に入れる正しい答えを,解答群の中から選べ。
eラーニングシステムの応答時間は,1件の要求に対するネットワーク上のデータ転送時間,アプリケーションサーバでの処理待ち時間,及びアプリケーションサーバの処理時間(処理を始めてから応答を返すまでの時間)の合計である。検討したネットワーク構成での応答時間の短縮効果を評価するために,アプリケーションサーバでの平均処理待ち時間を計算する。
アプリケーションサーバの要求1件の平均処理時間は0.40秒であり,要求の平均到着率は2.30件/秒である。処理の待ち行列はアプリケーションサーバだけで発生するものとして,現行のネットワーク構成における平均処理待ち時間を,次のM/M/1の待ち行列モデルの式で計算すると,4.60秒となる。 アプリケーションサーバを1台追加し,装置タイプBを導入したとき,1台のアプリケーションサーバでの平均処理待ち時間をM/M/1の待ち行列モデルによって計算すると, 秒となる。ここで,要求は2台のアプリケーションサーバに交互に振り分けられると仮定する。また,平均処理待ち時間は小数第3位を四捨五入し,ネットワーク上のデータ転送時間とアプリケーションサーバの処理時間は変わらないものとする。
eラーニングシステムの応答時間は,1件の要求に対するネットワーク上のデータ転送時間,アプリケーションサーバでの処理待ち時間,及びアプリケーションサーバの処理時間(処理を始めてから応答を返すまでの時間)の合計である。検討したネットワーク構成での応答時間の短縮効果を評価するために,アプリケーションサーバでの平均処理待ち時間を計算する。
アプリケーションサーバの要求1件の平均処理時間は0.40秒であり,要求の平均到着率は2.30件/秒である。処理の待ち行列はアプリケーションサーバだけで発生するものとして,現行のネットワーク構成における平均処理待ち時間を,次のM/M/1の待ち行列モデルの式で計算すると,4.60秒となる。 アプリケーションサーバを1台追加し,装置タイプBを導入したとき,1台のアプリケーションサーバでの平均処理待ち時間をM/M/1の待ち行列モデルによって計算すると, 秒となる。ここで,要求は2台のアプリケーションサーバに交互に振り分けられると仮定する。また,平均処理待ち時間は小数第3位を四捨五入し,ネットワーク上のデータ転送時間とアプリケーションサーバの処理時間は変わらないものとする。
解答群
- 0.03
- 0.34
- 1.34
- 3.41
解答選択欄
解答
- イ
解説
M/M/1の待ち行列の計算式が与えられているので、設問中の値を当てはめて計算していきます。
まず、現行のネットワーク構成における平均処理待ち時間(4.6秒)の算出手順を確認します。
0.92/(1-0.92)×0.4秒
=11.5×0.4秒=4.6秒
本題となる新構成では、要求が2台のサーバに交互に振り分けられるので、各サーバの平均到着率は1台構成のときの半分となる1.15件/秒になります。
0.46/(1-0.46)×0.4秒
=0.8518…×0.4秒≒0.34秒
∴イ:0.34
まず、現行のネットワーク構成における平均処理待ち時間(4.6秒)の算出手順を確認します。
- μ … 平均処理時間の逆数と説明されているので「0.4秒=2/5秒 → 5/2=2.5」
- λ … 平均到着率なので「2.3」
- ρ … 2.3÷2.5=0.92
0.92/(1-0.92)×0.4秒
=11.5×0.4秒=4.6秒
本題となる新構成では、要求が2台のサーバに交互に振り分けられるので、各サーバの平均到着率は1台構成のときの半分となる1.15件/秒になります。
- μ … 現行の時と同じ「0.4秒=2/5秒 → 5/2=2.5」
- λ … 平均到着率なので「1.15」
- ρ … 1.15÷2.5=0.46
0.46/(1-0.46)×0.4秒
=0.8518…×0.4秒≒0.34秒
∴イ:0.34